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ぶらりボキャブラ散歩
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アトランダムに単語を選択, 時に学校英語・受験英語的に, 時にトリビアにアプローチ。 しかも気が向いたときだけ更新して行く--だから気まぐれ英単語。 
でも単語暗記の手助けになると思います。 兄弟版ひとことENGLISHへと同様,ご活用ください。
(中)は中学生レベルの語, (高)は高校生レベルの語, (般)はその他の語を表します。

                
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092 (般)  olive oil 「オリーブ油」


ギリシャ神話の話です。 ギリシャにできる新しい町の名前を巡って,アテネとポセイドンが争っていました。 双方とも自分の名前をその町に付けると言って譲りません。 そこでその町に恵みをもたらす物を寄贈した方を勝ちとすることになりました。
ポセイドンは海に命じ軍馬を贈り,アテネは地に命じオリーブの木を贈りました。
アテネの贈り物の方が優れていると判定が出て新しい都市はアテネと名付けられ, オリーブは平和の象徴となりました。


オリーブは地中海の文化です。 気候が似ているアメリカのカリフォルニアやオーストラリアでも幸いされていますがたとえ商業的に成功しようと歴史と質の良さではアメリカのオリーブなど足元にも及びません。


オリーブが地中海の  言語にも現れています。 ロマンス諸語がオリーブの実とオリーブの木を別の単語で表すのに対し例えば英語の olive はオリーブの実でもあり木でもあるようにゲルマン諸語やスラブ諸語はこれを実と木の区別をつけません。
例: イタリア語 オリーブの実 oliva  オリーブの木 olivo
      フランス語 オリーブの実 olive  オリーブの木 olivier





健康ブームの手伝って日本の台所にも定着しつつあるオリーブ油。  この olive と oil を改めて見ると o と l  と  i  の3つの共通する文字があり良く似た綴りをしています。 それもそのはずで oil の語源は olive なのです。


ここでヨーロッパの諸語の「オリーブの実」と「油」の一覧を見てみましょう。 するとおもしろいことに気付きます。
オリーブの実
英語 olive oil
ドイツ語 Olive Öl
オランダ語 olijf olie
デンマーク語 oliven olie
スゥエーデン語 oliv olja
フランス語 olive huile
イタリア語 oliva olio
スペイン語 aceituna aceite
ポルトガル語 azeitona óleo
ルーマニア語 maslina* ulei
ロシア語 aliva*   maslo*
チェコ語 oliva olej
ポーランド語 oliwka olej
セルボクロアチア語 maslina ulje
ブルガリア語 maslina* zehtin*
ギリシャ語 elaia* elaion*
ラテン語 oliva oleum
アラビア語 zaytoun zayt
トルコ語 zeytin yag*
今回の主役はふだん目立たないスペイン語,ポルトガル語などイベリア半島の言語と, ルーマニア語,ブルガリア語などバルカン半島の言語です。


グレーのセルを見てください。 これらは同じ語源の語です。 すなわちスペイン語のオリーブと油, とポルトガル語のオリーブはアラビア語のオリーブが起源であり(スペイン語やポルトガル語の a- はアラビア語の冠詞 al ), ブルガリア語の油は, トルコ語のオリーブ zaytoun が起源です。 そしてアラビア語とトルコ語のオリーブは見てわかる通り同じ起源を持つ語です。
スペインとポルトガルはイタリアやフランスと同じラテン民族の国なので, オリーブはラテン語起源の語があったはずです。 しかし8世紀から15世紀にかけてのイスラム教徒のイベリア半島支配の影響でアラビア語起源の語の方が使われるようになってしまったのでしょう。


さて赤色のセルも同じ語源の語です。 ルーマニア語やセルボクロアチア語, ブルガリア語のオリーブはロシア語の油が起源です。  そしてロシア語の maslo はオリーブではなくバターを意味します。 つまりルーマニア語やセルボクロアチア語,ブルガリア語のオリーブは元を正せばオリーブではなくバターであるという変わった現象が起きているのです。



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