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アイスランド語独学ノート | |
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はじめに 295,864人 ― 2005年6月のアイスランドの人口です。 30万人そこそこの国でありながら, アイスランドには高度に発展した社会・文化があります。 航空会社が2社, テレビ局が14局, AMラジオ局が3, FMラジオ局が70, インターネット利用者が22万5千人。 (以上 CIA - The World Factbook より) そして世界で一番北にある国でありながら, 国民の平均寿命の高さは日本に次いで世界2位。 ついでながら1平方キロあたりの人口密度は独立国家の中ではオーストラリアなどと並んで193国中192位の2人。 (最下位はモンゴルの1.8人。) Wikipedia より
そのアイスランドで話されているアイスランド語は, 使用人口数から言えば世界の言語の中では下位に甘んじるでしょう。 しかしその言語の質から言えば世界の言語の中で上位にあると言っても過言ではありません。 9世紀にノルウェイ人が移住して以来ほとんど形を変えないまま現存している言語で, 外来語の導入を押さえ古来からの純粋な形を保つ努力をしています。 例えばテレビを sjónvarp (直訳: 映像を投げる)とするのはドイツ語が Fernsehen と言うのと同じように見えます。 (ただしドイツ語は television を直訳したに過ぎません。) しかし他に電話を sími (古語で細い糸), コンピュータを tölva (tölur 数 + völva 預言者)とするように, 独自の文化で外来語を採り入れる姿勢は他の言語にはあまり見られません。 アイスランドはサガと呼ばれる伝承文学を有することで知られていますが, アイスランド人は書くことが好きな国民で, 人口に対するプロの作家の数が世界で一番高いと言われています。 1955年にはHalldor Kiljan Laxness(1902-1998) がノーベル文学賞受賞していますから, 人口に対するノーベル文学賞受賞者の割合も世界で一番と言えるでしょう。 (1905年に Niels Finsen がノーベル医学賞を受賞しているので人口に対するノーベル受賞者の割合から言っても世界で一番と言えるでしょう。) そしてアイスランドは今ポップ・カルチャーの分野でも注目されています。 Björk や Sigur Rós (sigur は「勝利」 rós は「薔薇」という意味があります。 日本ではシガーロスと言うようですが正確にはセーギュル・ロウスという感じでしょう。 シガー・ロスのアイスランドでのコンサートの様子はここをクリック)や Mum の創り出す摩訶不思議な音楽を聞くと, 異星的なアイスランドの大地を思い浮かばざるを得ません。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() さてアイスランド語はどういう言語でしょうか。 大雑把に言えば, アイスランド語の文法は語形変化をするという点ではドイツ語に似ており, 統語法(シンタックス)においては英語や他のノルド語と似ています。 (1) 名詞には性(男性,女性,中性)があります。 そして格が4つ(主格, 対格, 与格, 属格)があります。 (2) それに伴ない形容詞も変化します。 形容詞にはまた弱変化と強変化もあります。 (3) アイスランド語が他のノルド語と異なるのは不定冠詞がないことです。 定冠詞にあたるものを名詞の語尾に付け足して表すのは他のノルド語と同じです。 そしてこの定冠詞にあたるものも性と格による変化があります。 (4) 格変化があるため前置詞や動詞の格支配があります。 (5) 動詞は主語による変化があり, また過去形に関しては弱変化と強変化があります。 法は直説法, 接続法, 条件法, 命令法があります。 時制は現在, 過去, 未来の基本時制と完了形があります。 ただし未来や完了は英語と同じく助動詞の助けを持って表します。 アイスランド語の文法が難しいと言われるのは名詞や代名詞, 形容詞, 動詞, 数詞の一部などが変化することにあります。 これだけならドイツ語やロシア語をはじめ他の印欧語によくあることなのですが, その変化が語によっていろいろで多様である印象を持たせるところにアイスランド語が難しいと感じる原因ではないかと思います。 例えば hestur(馬), söngur (歌), smiður (鍛冶屋), leikur(遊び), veggur(壁), staður (場所), köttur(猫), háttur (方法), sonur (息子), fótur (足), fingur (指), maður (男)などはすべて -ur で終わる男性名詞ですが下のパラダイムで示すように格変化が微妙に異なります。 |
単 数 |
主格 | hestur | söngur | smiður | leikur | veggur | staður | köttur | háttur | sonur | fótur | fingur | maður |
対格 | hest | söng | smið | leik | vegg | stað | kött | hátt | son | fót | fingur | mann | |
与格 | hesti | söng(vi) | smið | leik | vegg | stað | kötti | hætti | syni | fæti | fingri | manni | |
属格 | hests | söngs | smiðs | leiks | veggjar | staðar | kattar | háttar | sonar | fótar | fingurs | manns | |
複 数 |
主格 | hestar | söngvar | smiðir | leikir | veggir | staðir | kettir | hættir | synir | fætur | fingur | menn(ir) |
対格 | hesta | söngva | smiði | leiki | veggi | staði | ketti | hætti | syni | fætur | fingur | menn | |
与格 | hestum | söngvum | smiðum | leikjum | veggjum | staðum | köttum | háttum | sonum | fótum | fingrum | mönnum | |
属格 | hesta | söngva | smiða | leikja | veggja | staða | katta | hátta | sona | fóta | fingra | manna |
これだけではありません。 -ur で終わる語はこれらのどれかと同じ変化をするのもあれば, ここにも示していない形で変化するものもあります。 さらに男性名詞は -ur
以外の語尾で終わっているものもたくさんあり(-ar, -all, -ill, -inn, -andi,
-ari など) それらがここに示したように変化の形によってさらに細かく分類されます。 この調子で女性名詞や中性名詞も複数のクラスに分類されます。 したがってただ男性名詞, 女性名詞, 中性名詞の区別をつけたり, 不規則な複数形を覚えたりするのではなく, 名詞の格変化を1語ずつ確認したり覚えたりしないといけないということです。 非アイスランド人向けの辞書ではふつう単数属格と複数主格を活用の目安として載せています。 しかし格変化がある言語は語順が自由になりがちで, それがまた解釈を難しくさせますが, アイスランド語の語順はあまり「自由放任」という感じがしませんし, またドイツ語やオランダ語の語順とも違います。 英語に慣れている学習者には違和感がない語順です。 また単語は他のノルド語や英語, ドイツ語などゲルマン語に似ているので意味が推測できるのは救いです。 フィンランド語やハンガリー語のようにまったくゼロからのスタートをする必要はありません。 ただ発音は日本人には難しいです。 リスニングはデンマーク語ほどではありませんが難儀です。 発音と綴りの関係(フォニックス)は英語ほど困惑させませんが, 規則がたくさんあり面倒です。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 世界言語としての地位を確立しつつある, 世界で最も簡単な言語の1つ英語と, 民族語の中でもずば抜けて使用人口の少なくそして世界で最も難しい言語の1つのアイスランド語。 この二つは対峙的な位置にあります。 英語関係の仕事をしながら, 「英語,英語」と騒ぐ世の中に食傷気味の, 生まれつき変わり者の私は, アイスランド語を勉強することで世間一般のヒトビトとは違うんだぞ―という意識を密かに持って悦に入っているのです。 このページを開いたあなた, たぶんあなたも私と同じ種族だと思います。 アイスランド語は難しいだけに必ず一回は挫折してしまう言語です。 その分, わかり始めると学習が楽しくなる言語でもあります。 あなたも地球上でアイスランド語がわかる30万人+αの一人になりましょう。 次のページへ |