世界で一番遠い島の生活
トリスタン・ダ・クーニャは19世紀初めにスコットランド, オランダ, イタリア, アメリカなどから移り住んだり, 船が遭難してそのまま住みついたりした男性たちと, 彼らの配偶者になるためにセント・ヘレナ島から嫁いで来たムラート(白人とアフリカ系黒人の混血)や黒人の女性たちを先祖とする「多民族国家」です。 
次の7つの苗字を持つ80世帯余りの家族が暮らしています。


グラス (Glass スコットランド系), グリーン(Green オランダ系), スエイン(Swain イングランド系), ヘイガン(Hagan アメリカ系), ロジャーズ(Rogers アメリカ系), レペット(Repetto イタリア系), ラバレルロ(Lavarelloイタリア系)。
 先祖についてここをクリック



言語は英語ですが, 移住者の母語やアフリカーンス語(南アフリカの公用語。 17世紀のオランダ語を元に周囲の言語の要素が混じったリンガ・フランカといわれる, 一種の人工語)の影響を受けており, 話し言葉は独自の発音・語彙・文法体系があるため米英のネイティブ・スピーカーでも聞き取り不能なことがあるようです。

 
2002年10月20日 トリスタン・ダ・クーニャの新しい国旗が制定されました。
従来は英領セント・ヘレナの属領のため国旗はセント・ヘレナと同じでしたが初めて独自の国旗を持つようになりました。 詳しくはここをクリック
 


印章を題材にした切手



政体は, トリスタン・ダ・クーニャ本島と近隣の3つの無人島, ゴフ島, ナイチンゲール島, イナクセシブル島(接近不可島)とともにイギリスの海外植民地のセント・ヘレナの知事の権限下に置かれている属領ですが,セント・ヘレナ島から1,900キロも離れており, 現実は自給自足の独立国家に近い形態を取っています。
他のイギリスの属領と違い, 行政官の給料以外イギリスから公的援助を一切受けていないことを島民は誇りに思っています。
自治はイギリスから任命される行政官と3年おきの選挙で選ばれる12名の島民議員が行ないます。 議員の1名以上は女性でなければならないとされています。


       
住居
建国者ウィリアム・グラスがスコットランド出身であったため, 古い家の造りはスコットランドの藁葺きの屋根の家のそれに似ているそうです。  google で検索したスコットランドの藁葺き屋根の家のイメージと比べると確かに似ています。
屋根はニュージーランド・フラックス(ニュウサイラン)という観葉植物にもなっているリュウゼツラン科の植物で葺かれています。 家を造る材料は流木や難破船であることもありました。

ニュージーランド・フラックス



島の北西部には島民が The  Base と呼んでいるわずかな平地にあり, ここに島で唯一の集落である首都エジンバラ・オブ・ザ・セブン・シーズ(通称エジンバラ)があります。
エジンバラには行政府, 警察, 学校, 病院(『カモーリ病院』)をはじめ, 集会所(『プリンス・フィリップス・ホール』), 教会(プロテスタント系とカトリック系の二つ), 博物館, 缶詰工場, ラジオ(無線)局, スーパーマーケット, クラフトショップ, カフェ(来航船があるときのみ?), パブ(『アルバトロス・バー』 営業時間月〜土 6:00PM〜9:00PM), ビデオショップ, プール(島周辺は波が荒く水泳には不適)などがあります。 
キリスト教の教えを厳格に守り, 彼らは全員日曜日は仕事をしないようです。





エジンバラの姿 (ギネス記録「世界で一番遠い居住者のいる島(Remotest Island - inhabited)」の記念切手より。)


トリスタン・ダ・クーニャの首都エジンバラ (首都というとかっこいいですが村です)の観光案内




他にトリスタン・ダ・クーニャのいろいろな施設の写真など(外部リンク 記述:英語))
フランスFrance3 テレビで2004年7月に放映された番組の予告編の動画。 南太平洋のどこかの島, ガラパゴス島に続き, 最後のほうにわずか数秒だけ登場します。 (L'emission du 30 juillet 2004 の項のどれかをクリック)



トリスタン・ダ・クーニャの主な施設とその就業者状況 


セント・メアリ教会
                                                                         
 
                                                           
主な産業は漁業と切手販売です。  
特に漁業では Tristan Crawfish (crayfishとも綴る) と呼ばれるロブスターが重要な収入源で加工工場もあります。
日本へも冷凍にしてジャパン・ユナイテッド株式会社を総代理店にして輸入されています。
さらに詳しく。。



                         
                         
ジャパン・ユナイテッド株式会社の本多社長によるとトリスタン・ダ・クーニャのロブスターの漁期は7月からで(2006年の場合は12月15日まで),イギリス政府の資源保護政策により漁獲枠が決められており2006年は約400トン, 2007年は約430トンということだそうです。 獲れたロブスタは島の工場以外にも母船でも加工され南アフリカのゲープタウンまで運ばれ, さらに日本をはじめ世界の国々に輸出されています。


 
フローティング仕掛けの様子(クリックすると大きくなります)
提供:Ovenstone社, Japan United 株式会社


                      トリスタン名産ロブスタ


緊急ニュース: ロブスター工場が火災によって全焼しました。(2008年2月)





島には失業者はいません。 というよりむりやり何かしらの仕事に就かせているという感じがします。 どちらかというと職場の少なさの割に就業者人数が多い, 就業者オーバー気味です。 上記の主な施設とその就業者状況を見ても雑用係や何の仕事をしているのだかわからない人員が多いように見えます。 特に若い女性にこの手が多いようです。 男性の場合なら漁業の手伝いで集団で漁をしに行くということができますが, 女性の場合はそうはいかないのでしょう。 

 
漁へ向かうロングボート(クリックすると大きくなります)
提供:Ovenstone社, Japan United 株式会社



平均給料は月収わずか100ポンド(日本円で1万8千円)。 貨幣は1950年まで島に存在しませんでした。  

 
貨幣が存在しなかった時代を物語る切手。
矢印のところに注意。 切手の額面が LOCAL VALUE 4 POTATOES(地元の額面ジャガイモ4つ)となっている。 1946年に印刷されたが結局お蔵入りし使われることはなかった。




上記の切手を題材にしたトリスタン・ダ・クーニャ発見500年記念切手
(クリックすると大きくなります)





男子は学校を卒業する15歳になると漁師になることが多く, 女子はセント・ヘレナ島で勉強を続け帰島する傾向があります。 したがって知的エリートとして女子の果たす役割はかなり高いようです。 これは上記の主な施設とその就業者状況を見てもわかります。 この表はほぼ島の第2次産業と3次産業のすべてを表しますから, この産業での男女の雇用者数はほぼ同数であると見ていいでしょう。 


    
編物をする女性    土産品のロングボートの置物(右図)を作る男性


昔の民族衣裳。 男性も女性も羊毛で編んだ膝まである長いソックスを履いています。 女性はネッカチーフを巻くのがおしゃれだったようです。 男はニッカーボッカーと呼ばれる膝下までの半ズボンを履いてハンチング帽を被るのがおしゃれであったようです。 この服装は火山の爆発でイギリスに疎開した1960年まで一般的でした。

                  
昔は牛車(bullcart)が重要な交通手段でした。 1980年代の初めに消滅し現在はトラックがこれに変わっています。


 マユグロアホウドリ(Diomedea melanophrys) 南氷洋に生息するアホウドリ
島に娯楽が少ないため勢いアルコールに依存することになり, 稼ぎのほとんどを酒類に費やすと言われています。 
例えば1993年と94年の2年間では一人平均でウイスキー50リットルを飲んだという統計があります。  
WHOの1996年の世界のアルコール消費量の統計資料によると国連加盟国の中で一人当たりの消費が一番多かったのはスロベニアの15.15リットル。 第2位が韓国の14.40リットル。 ついでルクセンブルグの14.35リットルと続きますから, このトリスタン・ダ・クーニャの数字(1年の平均にすれば25リットル)は異常と見えます。 ちなみに日本は7.85リットルで第46位。


大酒のみの国民でも平均寿命はイギリスとほぼ同じというから肝臓は丈夫なようです。 しかしトリスタン・ダ・クーニャは風土病があります。 喘息です。 これは1827年にセント・ヘレナから集団で嫁いできた女性のうち3名に喘息の症状があったことが確認されており, 遺伝によって島民に多く見られる病気になったとされ, 遺伝の研究者の研究対象となったことがあります。


島外の情報を得るのはラジオ・トリスタンが島民向けに週4回放送するBBC放送のワールド・サービスと行政府内にある1台の電話とファックスです。 e-mail  もありますがこれは行政府の公的目的のためで島民と個別に連絡を取るには郵便やアマチュア無線しかないようです。 


以前は, 各家庭にはビデオがあり公立のビデオ図書館からビデオを借りて見ていましたが, 2001年からは人工衛星によるテレビ中継が始まりBBCのニュースや昼ドラ, スポーツ中継や子供番組などもイギリス本国並みに見ることができるようです。


かつては郵便を始め,缶詰, 本, 雑誌,薬品など日常雑貨品を運んで来る郵便船 RMS St Helena 号は毎年1月に1便運行があるだけで, 天候によっては島に上陸することなく素通りしてしまうからです。 そこで近くを航行する船が随時郵便や物資を運んだり,病人をケープタウンに運送したりしていたようです。


観光を含め一般人がトリスタン・ダ・クーニャ島に行くにはこの RMS St Helena 号を始めとする次の定期便や漁船に乗船するしかないのですが現実は, RMS St Helena号しか選択肢がないようです。  


 
ロブスター漁の母船エジンバラ号(クリックすると大きくなります)
提供:Ovenstone社, Japan United 株式会社


RMS St Helena(毎年1月に1便 2,3日寄港) MV Hanseatic(毎年3月に1便 南ジョージアからケープタウンへの途中寄港) MS Explorer(現在は11月 セント・ヘレナ経由ブラジルからサウス・ジョージアへの途中寄港) Marine Expeditions (3月と4月)-SA Agulhas (9月10月 3週間寄港) MV Edinburgh と MFV Kelso (ロブスター船 年間3回 2,3ヶ月寄港) 
詳しくはhttp://www.tristandc.com/shipping.php


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