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ウェールズ語学習者向けサイドリーダ その2 ウェールズの伝説・昔話
Chwedlau Cymru i Ddysgwyr(Eiry Palfrey)
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前のページに続きウェールズ語学習者向けのサイドリーダの紹介です。
このページの目次: 収録している話のあらすじ   本のレベル   入手方法


今回は Chwedlau Cymru I Ddysgwyr 『直訳: 学習者のためのウェールズの伝説』(著者: Eiry Palfrey 出版社:Dref Wen ) です。  タイトルどおりこの本には次の10編のウェールズの伝説が収められています。
  1. Madog ac America マドッグとアメリカ
  2. Llyn Tegid  テギド(バラ)湖
  3. Y Ferch o Gefn Ydfa  ケヴン・イドヴァの娘
  4. Siôn Cwilt  ショーン・クィルト
  5. Guto Nyth Brân  ギトー・ニス・ブラーン
  6. Wyn Bach Melangell  メランゲシュの子羊
  7. Blodeuwedd  ブロデイウェズ(ブロダイエズ)
  8. Llyn y Fan Fach  ヴァン・ヴァッハ湖
  9. Branwen ブラヌエン
  10. Owain Glyndr a Syr Lawrens Berclos  オウワイン・グリンドゥールとサー・ローレンス・ベルクロス


この中で1.のマドッグとアメリカはコロンブス以前にアメリカ大陸に渡ったとされるウェールズ王子マドッグの話。 Wikipeida の Madog の項に詳しく書かれています(記述は英語)。  なお英語では Madoc と記すため日本語の表記はマドックになっています。 日本でもマドックがアメリカに渡った話が本になっているようです。 『アメリカは誰のものか―ウェールズ王子マドックの神話』(川北稔著 NTT出版)


Chwedlau Cymru I Ddysgwyr にあるマドッグとアメリカについての話を訳してみるとこんな具合です(原文の記述は現在形になっています)
マドッグはウェールズ人でした。 グイネズに住みグイネズ王オウワインの息子でした。 彼は海と船が好きでした。 
マドッグ王子の時代はグイネズではたくさん戦がありました。 マドッグは戦が嫌いでした。 平和に暮らしたかったのです。 だから仲間とともにグイネズを離れアイルランドに暮らしに行くことにしました。
ある日彼は船出しました。 はじめは穏やかな日和でしたが, まもなく強風が吹き出しました。 風は本当にひどく吹き船はアイルランドを越え大海へ出てしまいました。
マドッグと仲間は陸地を見ることなく9ヶ月航海しました。 が最後に彼らは未踏の地に着いたのです。 そこはアメリカでした。ウェールズ人もイングランド人もかつて訪れたことがありませんでした。 しかしすでに多くの人が住んでいました。 アメリカインディアンです。 ウェールズ人とインディアンは親友になりました。
マドッグは新世界が気に入りました。 気候は穏やかで暮らしは快適でした。 そして戦はなかったのです。 彼は他の人たちもアメリカに住むよう誘おうとウェールズに戻る決意をしました。
多くのウェールズ人はマドッグとともに新世界に行きたかったのです。 ある日13隻の船が大海を渡ろうとグイネズを出航しました。 そしてウェールズの誰一人としてマドッグとその船のその後について聞いたものはいませんでした。


他の話の内容も簡単に記しましょう。
2. Llyn Tegid テギド(バラ)湖
残酷な王が孫のために開いた晩餐会でハープ弾きは「復讐するぞ」という声を聞き鳥が飛び立つのを目撃します。 そのあとを追い山で一晩過ごした後, 翌朝, 城に戻るとそこは湖になってハープが湖上に浮いていました。


3. Y Ferch o Gefn Ydfa  ケヴン・イドヴァの娘
裕福なケヴン・イドヴァの娘アンは貧しい労働者ウィル・ホプキンと恋に落ちますが親は二人の交際を認めません。 密かに文通をしますがそれが見つかり, アンは親の言いなりでアンソニー・マドックと結婚します。 しかし傷心から彼女は病気になります。 臨終の時を向かえ駆けつけたウィル・ホプキンの腕の中で息を引き取ります。


4. Sion Cwilt ショーン・クィルト
いろいろな色や形の縫いはぎをした服を着ているので「キルトのショーン」とあだ名がついた男は, 一晩で造った貧しい掘っ立て小屋に住みながら秋と冬の夜は英国紳士のような服装をして仲間と浜辺から船に乗って出かけます。 実はフランスに渡りワインの密輸をしていたのです。


5. Guto Nyth Brân ギトー・ニス・ブラーン
Llanwynno(シャンウィノという感じの発音)に住む「カラスの巣」という農場に住むことから「カラスの巣のギトー」とあだ名が付いているグリフィズ・モルガンは走るのが速いことで有名でした。 彼には Siân o'r Siop (お店のシャーン)という恋人でありロードマネージャができます。 ある日彼にイングランド人のプリンスという男が挑戦してきます。 彼らはニューポートとベドワス間20マイルのマラソンをし, ギトーは53分の記録で優勝します。 しかし周りの歓声を聞きながらギトーは突然シャーンの腕の中に倒れます。 ギトーにとってこれが最後の走りになってしまったのです。


Guto Nyth Brân は実在の人物(1700-1737)でここに書かれているのは実際にあった話のようです。 BBC のページWikipeida に詳しい話が載っています。


6. Wyn Bach Melangell  メランゲシュの子羊
アイルランドの王女であった Melangell(メレンゲシュ) は裕福な家に嫁ぐのが嫌で海を渡りウェールズのPowys (ポウイス)の山に潜んで暮らしました。 ある日 Powys の王Brochwel Ysgithrog(ブロフウエル・イスギスログ)が狩をして野ウサギを追っていたとき, 彼女に出会います。  野ウサギの行方を尋ねる王を無視するMelangellに素性を尋ねられると, 彼女は山で神に祈り動物たちの世話をしていると告げます。 Melangell の優しい心に感動し王は彼女にその土地を動物たちのサンクチュアリとして譲ります。


7. Blodeuwedd  ブロデイウェズ
※固有名詞はウェールズ語に近い表記にしてあります。 特に Blodeuwedd と Lleu は一般的な日本語表記と実際の発音がだいぶ違うように思えます。 ウェールズ人の朗読からこの語の発音を取り出してみました。


Blodeuwedd (一般的な日本語表記 ブロダイエズ)
二つ重なったDD は英語の有声音のth[ð]で -eu- は[エイ]という感じなので「ブロデイウェズ」と仮に表記しておきました。

 

Lleu (一般的な日本語表記 レイ, リュー)
二つ重なったLL は舌を[l]の位置においたまま息を出すので「シ」と「ヒ」の間の音に聞こえます。 -eu- は[エイ]という感じなので Lleu を「シェイ」と仮に表記しておきました。
   


マビノギオンからの神話伝説です。 母 Arianrhod (アリアンロッド)によって人間と結婚できない呪文をかけられた王子 Lleu (シェイ)に, 魔法使いの Gwydion (グイディオン)と Math (マス)は花々(ウエールズ語の blodau) から Blodeuwedd (ブロデイウェズ)という女性を造り, 妻とさせます。 


二人は Mur Castell (ミル城 現在の Tomen-y-Mur 画像)で幸せに暮らしますが, Blodeuwedd は 狩人のリーダ Gronw Pebyr (グロヌ・ペビル)と恋仲になり,  Lleu の殺害を計画します。  殺害に必要な槍を用意し機会を狙いますが, 殺害に失敗し Lleu は鷲に変身して森に逃げます。 


この事件を知った Gwydion は Lleu を探し出し Mur Castell に向かいます。  Blodeuwedd のメイドたちは城から逃げる途中湖に落ちて溺れ死に, Blodeuwedd は Gwydion によってフクロウにされます。 それでフクロウは他の鳥たちから嫌われるようになりました−というのがこの話のオチのようです。


8. Llyn y Fan Fach  ヴァン・ヴァッハ湖
Dyfed (ダヴェドまたはディヴェド)の Landdeusant(シャンゼウサント)の若い農夫 Gwyn (グイン)は Llyn y Fan Fach ヴァン・ヴァッハ湖の真ん中でたたずむ美しい娘に恋をします。 娘の気を引こうとパンをやる作戦になんとか成功してめでたく結婚しますが, 「3回, 娘をたたいたら湖に戻ってしまう」と条件付でした。 さて結末は−
これは脚色すれば市原悦子さんの『日本昔ばなし』としても通用しそうなこの本の中でもっとも「昔話的」でおもしろく読めると思います。 


9. Branwen ブラヌエン
これも 8.と同じくマビギノンからの話です。 ただしこの本に書かれている内容は学習者向けに改作されているようです。  本来の話のあらすじは Wikipedia (記述:英語)に出ていますのでそれを参照していただくとして, ここではこの本の場合のあらすじを記しておきます。


イギリス王 Bendigeidfran (ベンディゲイドブラン)は妹 Branwen (ブラヌエン)をアイルランド王 Matholwch (マソルフ)のもとに嫁がせますが, 結婚の宴に招待されなかった Branwen の腹違いの兄弟 Efnisien (エヴニシエン)の復讐で, Matholwch の馬が彼によって殺されます。 このため一度は関係がまずくなった Branwen と Matholwch の間も Bendigeidfran の計らいで持ちこたえ, 二人の間に子供もでき幸せな生活を送ります。


しかし Matholwch の馬を殺したのが Efnisien の仕業であることを知ったアイルランドの民衆の嫌がらせを受け, イングランド王にとの文通を絶たせます。  そこで Branwen は台所にやってきたシロムクドリに毎日えさをやり言葉を教え3年後にシロムクドリに伝言を託します。 妹の窮状を知った Bendigeidfran はアイルランドに向かい, やがて戦争が始まります。


10. Owain Glyndr a Syr Lawrens Berclos  オウワイン・グリンドゥールとサー・ローレンス・ベルクロス
Owain Glydr はイギリスの支配下にあったウエールズでこれに抵抗した14世紀後半から15世紀にかけて実在したウェールズ王子で, シェイクスピアの『ヘンリーIV』の中で Owen Glendower (オウエン・グレンドワー)と記されている人物です。  詳しいことはWikipedia (記述:英語)に掲載されています。
この本ではイギリス王側についていた人物 Syr Lawrens Berclos を騙して, フランスからやってきた旅人として仲良くいっしょに時間を過ごし, 帰り際に身を明かして面食らわせたという話が載っています。


実はこの10章の文はアベリストウィス大学(Aberystwyth University) の2005年定期試験の第6問長文読解問題でほぼそのまま使われています。 文字化けしている可能性があります。 画面の適当なところを右クリックしてメニューを出し, エンコードから「西ヨーロッパ言語(ISO)」を指定してください。


                   


【本のレベル】


この本で使われている文法や語彙から, この本は初級ウェールズ語のサイドリーダという感じがします。 
  • 時制は1話から8話までが現在形, 9話と10話のみが過去形です。 1箇所だけ未来形の文があります。 
  • 文は単文と重文だけで複文は使われていません。 
  • 本文は24ぺージ。  どれも400〜500語くらい短い文章です。 そして全体で使われている語彙数も500位で, それらはほぼすべて巻末の語彙集に含まれています。 語彙はこの巻末の語彙集以外に, 各章の終わりにもあり, 辞書は必要としません。
  • 朗読カセットテープもありウェールズのハープや歌もそれぞれの話の前後に聞くことができます。 古い録音のため音は良好とは言えませんが, リスニングの練習になります。
  • 本文についてのウェールズ語の質問や自由作文の問題があります(答えはありません)。
  • 初版が1976年で, 学習ウェールズ語として Cymraeg Byw (Living Welsh) が使われていた時期と一致します。  そのため, 会話の部分にそれが見られます。 と言っても2文程度しかなくこれにこだわる必要はありません。 


                   


【入手方法】


私は出版社の Dref Wen のサイトからオンラインで買いました, 送料が Amazon や Abebooks よりも安く, しかも注文して15日ほどで着きましたからかなり良心的だと思います。 


  5.99ポンド
カセット 2.99ポンド
送料  4.00ポンド
合計で日本円にして1800円くらいでした。(2008年12月現在)


オンラインで購入手続きをすると, PayPal 経由で支払う画面になりますが, PayPal にアカウントを作る必要はありません。 また注文するときに自動的に PayPal につながり住所など個人情報を日本語で入力するようになりますが, 英語で表記するように使用言語の選択を英語に変えなくてはいけません。 


(注) このコンテンツの作成者はウェールズ語の独学者であり専門家ではありません。