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英語からイタリア語へ
英語の知識をイタリア語学習に活かす方法
イタロ・カルヴィーノの初期短編集より『菓子泥棒』のイタリア語について 
このページに書かれていること
■ 原書をネットを通じて海外の古本屋から買うには
■ 『菓子泥棒』について
■ どっちが正しい? 英語訳と日本語訳 その1 (2008年11月12日更新
■ どっちが正しい? 英語訳と日本語訳 その2
■ どちらも正しくない? 英語訳と日本語訳 (2008年11月12日更新
■ 私製『教えて!知恵袋』 このイタリア語がわからない!  その1 (2008年11月11日更新
■ 私製『教えて!知恵袋』 このイタリア語がわからない!  その2
■ イタロ・カルヴィーノの初期短編集 I racconti (Einaudi 1958年初版) と Ultimo viene il corvo(Einaudi 1949年初版) に収録されている作品の原題と邦題と英題一覧
■ 短編集 Ultimo viene il corvo が無料でダウンロードできる話
■ イタロ・カルヴィーノの『大きな魚,小さな魚』などの英語対訳本について(別ページ)
■ イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』について(別ページ)




【原書をネットを通じて海外の古本屋から買うには】


短編『大きな魚, 小さい魚(Pesci grossi, pesci piccoli)』を原文と日本語・英語訳で読み(このことについては別ページに書いてあります)他のイタロ・カルヴィーノの初期の短編が収められている I racconti も訳の手助けをもらいながら, 原文で読んでみたいという思いが募りました。  


しかし書籍に多くの金をかけるほどゆとりはありません。  特にヨーロッパから書籍を注文すると送料が馬鹿になりません。  私はこういうときオンラインで古本を買って済ましています。 海外の古本の場合は, Amazon.jp や Amazon.com のマーケット・プレイス, それに古本専門の Abebooks が便利で信頼できます。 今回の場合も, Abebooks を利用しアメリカのとある古本屋より書籍代10ドル+送料9ドルの合計19ドルで購入しました。 注文当時(2007年4月)の為替レートで約2,300円の買い物ですから私にはリーゾナブルな値段に思えました。 


ネットで古本を注文するとどのような状態の本か記述があるものの実際に配送されて手にするまでわかりません。 今回の場合, ハードカバーということもあって作りはしっかりしています。 ただダストカバーがないことと4ページ分鉛筆で英語の書き込みがあること,それと洋書の古本独特の臭いがきついのが気になりました。 ダストカバーがないのはどうしようもできませんが,書き込みの方は消しゴムで消し, 臭いの方は脱臭剤とともにせんべいの空き缶に入れて脱臭を試みました。 が20年以上の年月は消し去ることはできませんでした。 


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【『菓子泥棒』について】


晶文社から出ていた『魔法の庭』(和田忠彦訳)で I racconti の一部の日本語訳を読み, 原書が手に入ったらまずこれから読もうと思っていた作品がありました。  それは Furto in una pasticceria (邦題:菓子泥棒 英題:Theft in a Cakeshop)です。  Dritto , Gesubambino, Uora-uora (和田忠彦訳ではそれぞれヤリテ, ボウヤ, イ・イマダという名前になっています)の3人が深夜の菓子店に泥棒に入るユーモラスな話です。 洋菓子店のウィンドウ・ケースを見るのがどう見ても似合わない風貌の私(男)にとって洋菓子店は一人では入ることのできない禁断の場所です。  ですから悪党や警察官であるむさ苦しい男たちが菓子屋をめちゃめちゃにしてしまうこの話がえらく気に入ってしまったのです。


カルヴィーノの初期の短編集は登場人物の置かれた状況がふんだんに出てくるモノや動物によって浮き出されます。 (このモノの描写の極地が『マルコ・ポーロの見えない都市』でしょう)。 『菓子泥棒』の場合, そのモノは言うまでもなく菓子です。  作品中には以下のような菓子や貸しの材料がたくさん出てきます((リンクはgoogle のイメージ検索)。


torta (ケーキ) crema (クリーム)  ciliegia candita (シロップ漬けのチェリー)  crafen(ドーナッツ) marmellata(ジャム) meringhe (メレンゲ) croccanti (アーモンド菓子) file di paste allineate di tutte le forme e di tutti i colori (すべての形とすべての色で並べられた菓子の列) torte cariche di creme che stillavano come cera da candele accese (火のついたロウソクのロウのように垂れているクリームでいっぱいのケーキ) batterie schierate  di panettoni (パネットーネで作った並んだ砲兵隊) muniti casteli di torroni (ヌガーで作った堅固な城) ciambelle (チャンペッラ) pandispagna multicolore (いろいろな色のスポンジケーキ) brioch (ブリオッシュ) plum cake (プラムケーキ) biscotti (ビスケット)  biscotti savoiardi (サヴォイア・ビスケット) などなど


これらの菓子類は Pesci grossi, pesci piccoliの魚類, Un bastimento carico di granchi の蟹, Un pomeriggio, Adamo の爬虫類, Il bosco degli animali の家畜類に相当すると思うのですが, これらの「うじゃうじゃ」モノが必ずしも美しく描写されているわけではないのに比べ(爬虫類の苦手な読者は Un pomeriggio, Adamo を最後まで読まないほうがよいでしょう), 『菓子泥棒』の「うじゃうじゃ」は心地よいファンタジーの世界, 子供のときに誰もが一度は思い描く夢の世界です。  この作品が発表になったのが戦後間もない1946年ですから当時の読者にはその思いが今以上に強かったでしょう。


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【どっちが正しい? 英語訳と日本語訳 その1】


『菓子泥棒』の出だしの部分で日本語と英語の訳が異なることに気づきました。 まずその訳を引用します。


あたりは静まりかえっていて, 通りにいても家々の時計の音が聞こえた。 2時だ, 日の出を拝むまえに急いで仕事を片付けてしまわなければ。 (略)ヤリテはこれからしでかそうという仕事についてはいつもなにも説明しない男だ。 (和田忠彦訳『魔法の庭』より)
The street was so silent that the ticking of the clocks could be heard in the houses.  With two jobs to do, they'd have to hurry if they were to get through them by dawn.  (...) But Dritto was never one to explain about any job he was going to do.  (Archibald Colquhoun, Peggy Wright どちらの訳か不明 Adam, One Afternoon And Others より)


日本語訳は「2時だ」, 英語訳は With two jobs to do (やる仕事が2つあって)。  「2」が共通しているもののあとは異なります。 これはどうしたことなのでしょう?  ではここの部分の原文を見てみましょう。


C'era tanto silenzio che dalla via si sentivano suonare gli orologi nelle case: due colpi, bisognava sbrigarsi se non si voleva farsi cogliere dall'alba. (...)  Il Drtitto è uno che non spiega mai il colpo che ha intenzione di fare.


下線を施した due colpi の訳が異なるのです。  colpo は辞書によると「打撃, 殴打, 一撃; 打つ音; 発砲; 突然の行為, 不意の出来事; 人を驚かす行為; 災難」などたくさんの意味があります。  colpo は引用した最後の部分 il colpo che ha intenzione di fare にも見られますが, こちらは日本語では「仕事」 英語では job で共通しています。 そして英語の訳はこの「仕事」の意味として due colpi を捉えてていることがわかります。 一方, 日本語訳の方はこの前にある時計の音(suonare gli orologi) から「打つ音」と捉え「2つ打つ音」つまり「2時だ」となっているわけです。


どちらが正しい訳なのでしょうか。 ここで気づくのは due colpi の前の文がコロン(:)で終わっていることです。 なぜピリオドではなくコロンにしているのでしょうか。  それはコロン以下が前文の「家の時計の音が聞こえた」ことを受けて発した, または考えた泥棒の言葉を自由間接話法(英語の文法で言う描出話法)で表しているからだと思います。 ですから日本語訳は due colpi を「2時だ」としているのでしょう。


一方, 英語訳も bisognare の半過去 bisognava を  had to とせずに would have to とし, 主語を they にしていることからコロン以下を自由間接話法として捉えていることがわかります。 
この英語の部分の話法を伝達者をリーダ格の Diritto (ヤリテ)として直接話法,間接話法にすれば以下のようになるでしょう。 
直接話法: Diritto said, " With two jobs to do, we'll  have to hurry if we are to get through them by dawn."
間接話法: Diritto said that, with two jobs to do, they'd have to hurry if they were to get through them by dawn.



しかし, 英語訳では原文がコロンであることを無視してピリオドにしています。 前文の「時計」を考えずに, 泥棒たちはこの夜に2軒盗みに入ることが示唆しています。 しかし実際は菓子屋だけしか襲っていません。 もっとも警察に見つかってもう1軒予定していた犯行は断念したと取ることができなくなないですが, それでもここでわざわざ2軒盗みに入ることを強調する根拠はないと思うのです。 おそらく英語の訳者は, この下にある  Il Dritto è uno che non spiega mai il colpo che ha intenzione di fare. の il colpo (不意の襲撃=泥棒に入ること)につられて訳したのでしょう。 


英語訳の方が誤訳― というように見えます。 それとも二つの解釈が可能だということにすればよいのでしょうか。 どう思われますか?


さてこの件について F.Milanese 様から以下のご指摘をいただきました。 ありがとうございました。
あたりは静まりかえっていて, 通りにいても家々の時計の音が聞こえた。 (ボーン、ボーン) 2時だ,
でしょう。
以下は、私が思い浮かべる情景ですが
si sentivano suonare gli orologi
というのは、「チク・タク」という音も聞こえそうなくらいの夜の静寂。
そんな中、突然鳴り響く(柱時計などの)鐘の音。(ボーン、ボーン)


突然鳴り響き、ビクッとするからcolpoという単語が選択されているのだと思います。
他だ、単に時刻を知らせるだけならば
la campana gli segnalava le due
で十分です。でも、それでは「夜のしじまに鳴り響く〜」という情景は浮かびません。



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【どっちが正しい? 英語訳と日本語訳 その2】


他にもまだ英語訳と日本語訳が異なるところがあります。 今度は原文から先に引用しましょう。 
菓子店に入って菓子を頬張っているボスの Dritto (日本語訳 ヤリテ)や Gesubambino (日本語訳 ボウヤ, 英語訳 Baby)に対し, 見張り役をさせられた Uora-uora (日本語訳 イ・イマダ)がたまらなくなって持ち場を放棄して店に来ると役目を替えるように訴えます。 しかし Dritto に拳銃を向けられ見張りを続けるよう命じられるシーンです。 


Uora-uora piangeva.  Gesubambino sentí d'odiarlo.  Sollevò una torta col 《buon compleanno》 e gliela tirò in faccia.
イ・イマダは泣いていた。 ボウヤはそれが憎らしかった。 誕生ケーキを一個つかむと,彼の顔めがけて投げつけた。 (和田忠彦訳『魔法の庭』より)
Uora-uora burst into tears.  Baby felt he hated him.  He picked up a cake with "Happy Birthday" written on it and flung it in his face. (Archibald Colquhoun, Peggy Wright どちらの訳か不明 Adam, One Afternoon And Others より)


代名詞 lo を和田忠彦先生は Uora-uora が泣いていることを指すとし, 英語訳は Uora-uora を指すとしています。 英語なら him と it で使い分けるところをイタリア語では両方とも lo となることからの解釈の違いです。 ぱっと読むと英語訳のように lo は Uora-uora を指すように見えます。  しかし日本語訳を読むとなるほど, Uora-uora その人が憎いのではなく, 泣いている姿に腹が立つという心理はわかります。 深い解釈に浅く読んでしまった自分を恥じ入った次第です。


別ページでイタロ・カルヴィーノの Pesci grossi, pesci piccoli (大きな魚, 小さな魚)の訳で il più bello を better と比較級で訳している部分があることについて触れましたが, もし両方の作品の訳が同一の訳者だとすると, この訳者は, シロウトの私が生意気な口をきいて申し訳ないのですが, なんとなく荒っぽい読み方・訳し方をしているように思えます。 上記の due colpi のもその下にある colpi につられて訳している感じがします。 またこの piangeva も半過去なのでどちらかというと「泣き出す(burst into tears)」 というより日本語訳のように「泣いていた」の方が正確なように思えます。 意訳と言えば意訳かもしれませんが。。。


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【どちらも正しくない? 英語訳と日本語訳】


私はイタリア語を30年ほど前に大学の第3言語で週に1回授業を受けただけで後はきまぐれな趣味としての勉強をしてはやめて勉強してはやめてを繰り返してきました。 いまだに動詞の活用はうる覚え, 語彙力もありません。 だからこんなことを書くのはおこがましいのですが, 次のイタリア語の訳は英語・日本語ともおかしいのではないかと思うのです。 


Mary la Toscana era l'amante di Gesubambino: aveva delle gambe lunghe e lisce e un corpo e un viso quasi equini.  Gesubambino le piaceva perché si raggombitolava e s'arrampicava sul suo corpo come un grosso gatto.
トスカーナのマリーはボウヤの恋人だった。  すべすべの長い脚, 顔とからだは馬みたいだった。  大きな猫みたいにからだを丸めてかれのからだによじのぼってくる彼女がボウヤは好きだった。 (和田忠彦訳『魔法の庭』より)
Tuscan Mary was Baby's girl-friend; she had long smooth legs and a face and body that were almost horse-like.  Baby liked her because he could curl himself up and wind round her like a cat.  (Archibald Colquhoun, Peggy Wright どちらの訳か不明 Adam, One Afternoon And Others より)


体を丸めて這い上がってくるのが日本語訳は女のマリー, 英語訳は男のボウヤになっています。 つまり甘えるのが日本語訳は女, 英語訳は男となっているのが違うことがわかります。 主語を表さず si raggombitolava e s'arrampicava としているし, sul suo corpo の suo は英語の his と her を兼ねているからどっちが恋人に甘えているのかわかりません。 これは読み手の解釈次第でしょう。


しかし, それよりも下線部の出だしの Gerubambino le piaceva の訳は英語・日本語ともにボウヤ(Baby)がトスカーナのマリーを好きだとしていますが, 初級のイタリア語で必ず勉強する「私は〜が好きです」 mi piace 〜 の構文は間接補語人称代名詞が「好き」の主体だから, この場合 間接補語人称代名詞が le なので 「トスカーナのマリーがボウヤのことを好き」なのではないでしょうか?


そうすると un grosso gatto (大きな猫)はボウヤということになり, こんな訳になるのではないでしょうか。
「マリーはボウヤが好きだった。 というのも大きな猫みたいに体を丸めたり彼女の体によじ登ったりするからだった」


もっとも『魔法の庭』の巻末の解説で「訳出に際しては, 短編集『最後に烏がやってくる』 Ultimo viene il corvo, ivi の初版(49年)と第2版(69年), そして個々の短篇の新聞・雑誌初出テクストの三者と上述の『短編集』との異同を可能な限り検討した。 したがって原テクストは必ずしも『短編集』と一致しない」と書かれてありますでこのイタリア語ではない可能性があります。 ちなみに上のイタリア語の引用は I racconti は Einaudi 1958年の1983年版からのものです。


この件についても F.Milanese 様から以下のご指摘をいただきました。 ありがとうございました。
日本語訳が間違っています。


Gesubambino le piaceva----ボウヤ(=赤子のイエス?)は彼女に気に入られていた
perche` si raggombitolava (come un grosso gatto)---なぜなら(大きなねこのように)毛糸玉のように丸まり
e s'arrampicava sul suo corpo come un grosso gatto---そして、大きなねこのように身体によじ登ってくるからだ


よじ登るのはボウヤの方です。
それに、ボウヤに長い脚のマリーがよじ登ったら潰されそうな気がしますが。。。。




                                            


【私設『教えて!知恵袋』 このイタリア語がわからない!  その1】



ところで【どっちが正しい? 英語訳と日本語訳 その1】で引用した due colpi に続く bisognava sbrigarsi se non si voleva farsi cogliere dall'alba. を私をとんでもない解釈にして読んでしまいました。 


(1) bisognava sbrigarsi は非人称動詞 besognare に「急ぐ」の sbrigarsi がくっついて「急がなくてはいけない」。  これはあっていると思います。
(2) 接続詞 se に続く non si voleva の si は「私たち」の意味に近い漠然と一般の人を表す非人称主語と見て「もし私たちが〜したくないならば」としました。
(3) farsi cogliere の farsi は英語の使役動詞の構文である have +目的語+過去分詞 「〜される」「〜してもらう」に相当するものと思いました。  cogliere を辞書で調べると第1義は「摘み取る」のようですがこれから「捕まえる」という意味に広げ, 使役の farsi とあわせて「捕まえられる」と解釈しました。 
(4) 最後の dall'alba の前置詞 da は本来, 時を表す名詞といっしょであると「〜から」になるので「夜明けから」となりそうですがこれでは意味が通じません。  これを原因を表すと見て「夜が明けたせいで」と半ば無理やり解釈しました。


以上をあわせて「夜が明けたせいで捕まりたくなければ, さっさと済まさなくちゃいけない」と解釈したのです。


この部分の和田忠彦先生の日本語訳「日の出を拝むまえに急いで仕事を片付けてしまわなければ」からすると se non si voleva farsi cogliere dall'alba は「日の出を拝むまえに」にあたるようです。 しかし意訳されているのでこの部分のイタリア語の構造がわかりません。 


英語訳 they'd have to hurry if they were to get through them by dawn.  の場合, 意図目的を表す if they were to が si voleva にあたり, 続く get through them (それらを終わらせる)が farsi cogliere に相当するようですが farsi cogliere はそのような意味にある熟語ということでしょうか。 また dall'alba を by dawn としていることから da に期限の by の意味があることになりますが, 私の辞書(小学館伊和辞典)には見えません。 そして何よりもわからないのは原文の non が訳には見えないことです。 これは冗語の non ということなのでしょうか。


ここでお願い。 この bisognava sbrigarsi se non si voleva farsi cogliere dall'alba の解釈について貴方(貴女)のお考えを弊サイトまで作成者までお知らせください。 さしつかえなければここに掲載させていただきます―


と書いて1年半, 何の反応もなく月日が流れ, 半ば諦め作成者からも忘れられたコンテンツになりつつあったある日 F.Milanese 様から次のようなメールをいただきました。   ありがとうございました。   わざわざ時間を割いて文章を起こしていただくのですから,  感謝感激。  
以下に引用させていただきます。
初めまして


もう、解決されていますか?


bisognava sbrigarsi -急ぐ必要があった
se non si voleva farsi cogliere -もし、捕まりたくなければ
dall'alba -夜明けによって


「夜明け」に捕まえられる=夜明けに飲み込まれる→夜明け、日の出
 

se si voleva farsi cogliere dall'alba - 日の出を拝みたければ
se NON si voleva farsi cogliere dall'alba - 日の出を拝みたくなければ


日の出を見たくなければ、その時間前に終了する必要がありますよね。
つまり、日の出を拝む前に、となるわけです。


NONの位置を変えてみます
NON bisognava sbrigarsi se si voleva farsi cogliere dall'alba
もし、日の出を見たければ、ゆっくりしていれば良かった(急ぐ必要はなかった)
「夜明け」に捕まえられる=夜明けに飲み込まれる―
そう読むのですね。 なるほどなるほど。  「夜の闇に包まれる」という表現がありますが, 「夜明け」に捕まえられる=夜明けに飲み込まれる―という発想はまったく考え付きませんでした。  farsi cogliere の動作主が dall'alba の da は受動態の動作主を表すわけですね。  farsi cogliere と dall'alba は一体になっているのに, 私は farsi cogliere で切ってしまい dall'alba を時とか原因とかを表すとしてしまったのです。  farsi cogliere の動作主が dall'alba の da は受動態の動作主として読めば non の意味もわかります。 
改めて F.Milanese 様, ありがとうございました。


さてここで英語訳のほうを見てみましょう。 
they'd have to hurry if they were to get through them by dawn
da は受動態の動作主を表す前置詞ですから 英語の訳でも by dawn になっているわけです。 
しかし, 待てよ, ここで英語の訳者は間違った解釈をしているのではという疑いが出てきませんか。


この部分の英語訳 they'd have to hurry if they were to get through them by dawn. の get through them by dawn の by dawn は受動態の動作主を表していません。 そもそも get through them は受動態ではなく, get through them 「それらを終わらせる」から見て, この英語の文の by dawn は「夜明けまでに」という期限としか解釈できません。 つまり英語の訳者は dall'alba を by dawn と英語に置き換えたのはよいものの, その by を, 現実にはその用法では使わないのに, 「〜までに」の「期限」を表す by とし, farsi cogliere は単純に文脈から「盗みの仕事を片付ける」としてしまっている感じがします。  


他の部分でも書きましたが, この英語の訳者は「なんとなくそんな感じ」で訳してしてしまう傾向があるのでは―と思いました。  意訳したのだと言えばそうなりますが俗に言う「やっつけ訳」とも言えなくない様な。。。



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【私設『教えて!知恵袋』 このイタリア語がわからない!  その2】


上記以外に『菓子泥棒』もう一箇所, これは何だろうというイタリア語があります。

Si sentí bussare a una porta, poco distante, con impaziena: era il Dritto che aspettava gli si aprisse.
すぐ近くでせわしげに戸をたたく音が聞こえた。 ヤリテが戸があくのを待っていたのだ。
(和田忠彦訳『魔法の庭』より)
He was suddenly aware of an impatient knocking on a door nearby; it was Dritto waiting to be let in.
(Archibald Colquhoun, Peggy Wright どちらの訳か不明 Adam, One Afternoon And Others より)


下線をほどこした部分はおそらく apettava che gli si aprisse となるべきなのに接続詞 che がありません。
他にも同じページに以下の記述があります。


Sembrava lotasse con i dolci
まるで菓子と闘っているみたいだった。 (和田忠彦訳『魔法の庭』より)
He seemed to be battling with the cakes
(Archibald Colquhoun, Peggy Wright どちらの訳か不明 Adam, One Afternoon And Others より)


これも sembrava che lotasse con i dolci となるのが一般的な学習書に出ている形だと思います。
英語の接続詞 that はしばしば省略されますが, イタリア語の che も省略されるのでしょうか。 この両方の例は接続法を伴うケースですので接続法との関連があるのでしょうか。 このことに関してご存知の方は弊サイトまで作成者まででお知らせください。  さしつかえなければここに掲載させていただきます。


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【イタロ・カルヴィーノの初期短編集 I racconti (Einaudi 1958年初版) と Ultimo viene il corvo(Einaudi 1949年初版) に収録されている作品の原題と邦題と英題一覧】


I racconti (Einaudi 1958年初版) に収録されている作品(数字は収録順を表す)
Ultimo viene il corvo(Einaudi 1949年初版)  に収録されている作品(数字は収録順を表す)
 Recital leggendo audiolibri の 朗読CDに収められている作品


LIBRO PRIMO Gli idilli dificili
01

Pesci grossi, pesci piccoli (1950)

- 大きな魚,小さな魚 ※1 ※3 Big Fish, Little Fish ※6 ※8
02 Un pomeriggio, Adamo (1947) 01 - Adam, One Afternoon ※7 ※8
03 Un bastimento carico di granchi (1947) 02 蟹だらけの船 ※1 A Ship Loaded with Crabs ※8
04 Il giardino incantato (1948) 03 魔法の庭 ※1 The Enchanted Garden ※7 ※8
05 Mai nessuno degli uomini lo seppe (1950) - だれも知らなかった ※1 -
06 Un bel gioco dura poco (1952) - 楽しみは続かない ※1 -
07 Andato al comando (1945) 17 - Going to Headquarters ※7 ※8
08 Ultimo viene il corvo (1946) 18 最後に鴉がやってくる ※4 The Crow Comes Last ※7 ※8
09 Paura sul sentiero (1946) 15 小道の恐怖 ※1 Fear on the Footpath ※7 ※8
10 Campo di mine (1946) 21 - Mine Field ※8
11 Uno dei tre è ancora vivo (1947) 19 - One of the Three is Still Alive ※7 ※8
12 Il bosco degli animali (1948) 20 動物たちの森 ※1 Animal Wood ※7 ※8
13 Paese infido (1953) - 不実の村 ※1 -
14 Furto in una pasticceria (1946) 23 菓子泥棒 ※1 Theft in a Cakeshop ※7 ※8
15 Si dorme come cani (1947) 26 - Sleeping Like Dogs ※7 ※8
16 Va' cosí che vai bene (1947) - うまくやれよ ※1 -
17 Dollari e vecchie mondane (1947) 24 - Dollars and the Demi-Mondaine ※7 ※8
18 Un letto di passaggio (1949) - ある悪党の冒険 ※2 Transit Bed ※7
19 Un gatto e il poliziotto (1948) 29 猫と警官 ※1 The Cat and the Policeman ※7
20 Funghi in città (1952) - - -
21 Un piccione comunale (1952) - - -
22 La pietanziera (1952) - - -
23 La cura delle vespe (1953) - - -
24 Il bosco sull'autostrada (1953) - - -
25 L'aria buona (1953) - - -
26 Il coniglio velenoso (1954) - - -
27 Un viaggio con le mucche (1954) - - -
28 La panchina (l955) - - -
29 Luna e Gnac (l956) - - -
30 La gallina di reparto (l954) - - -
31 La notte dei numeri (l958) - - -
32 La signora Paulatim (l958) - - -
LIBRO SECONDO Le memorie dificili
33 Uomo nei gerbidi (l946) 06 - -
34 I fratelli Bagnasco (l946) 10 - Leaving Again Shortly ※7
35 Locchio del padrone (l947) 07 - -
36 I figli poltroni (l948) 08 - Lazy Sons ※8
37 Pranzo con un pastore (1948) 09 - A Goatherd at Luncheon ※7 ※8
38 L'entrata in guerra (1953) - - -
39 Gli avanguardisti a Mentone (l953) - - -
40 Le notti dell'UNPA (l953) - - -
LIBRO TERZO Gli'amori dificili
41 L'avventura di un soldato (l949) 25 ある兵士の冒険 ※2 The Adventure of a Soldier ※8
42 L'avventura di una bagnante (l911) - ある海水浴客の冒険 ※2 The Adventure of a Bather ※8
43 L'avventura di un impiegato (1953) - ある会社員の冒険 ※2 The Adventure of a Clerk ※8
44 Lavventura di un miope (l958) - ある近視男の冒険 ※2 The Adventure of a Nearsighted man ※8
45 L'avventura di un lettore (l958) - ある読者の冒険 ※2 The Adventure of a Reader ※8
46 L'avventura di una moglie (l958) - ある妻の冒険 ※2 The Adventure of a Soldier ※8
47 L'avventura di un viaggiatore (1957) - ある旅行者の冒険 ※2 The Adventure of a Traveler ※8
48 L'avventura di due sposi (l958) - ある夫婦の冒険 ※2 -
49 L'avventura di un poeta (l958) - ある詩人の冒険 ※2 The Adventure of a Poet ※8
LIBRO QUARTO La vita dificile
50 La formica argentina (1952) - アルゼンチン蟻 ※5 The Argentine Ant ※7
51 La speculazione edilizia (l957) - - -
52 La nuvola di smog (l958) - - -

Ultimo viene il corvo
04 Alba sui rami nudi -
05 Di padre in figlio Father to Son ※7
11 La casa degli alveari The House of the Beehives ※7 ※8
12 La stessa cosa del sangue -
13 Attesa della morte in un albergo -
14 Angoscia in caserma -
16 La fame a Bévera Hunger at Bévera ※7 ※8
22 Visti alla mensa Seen in the Canteen ※7
27 Desiderio in novembre Desire in November ※7 ※8
28 Impiccagione di un giudice A Judgement ※7
30 Chi ha messo la mina nel mare? Who Put the Mine in the Sea ※7

※1 『魔法の庭』(晶文社) 和田忠彦訳 
※2 『むずかしい愛』(福武書店/岩波文庫) 和田忠彦訳 
※3 『現代イタリア短編選集』(白水社) 米川良夫訳 
※4 『世界短編名作選 イタリア編』 (新日本出版社) 米川良夫訳 
※5 『現代イタリア幻想短篇集』 (国書刊行会) 竹山博英訳 
※6 《Penguin Parallel Text Italian Short Stories 1》(Penguin Books) Archibald Colquhoun 訳 
※7 《Adam, One Afternoon And Others》(Vintage Classics) Archibald Colquhoun, Peggy Wright 訳 
※8 《Difficult Loves》(Vintage Classics)(Vintage Classics) William Weaver, Archibald Colquhoun,  Peggy Wright訳


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短編集 Ultimo viene il corvo が無料でダウンロードできる話】


短編集『最後に鴉がやってくる』 (Ultimo viene il corvo はまるごと無料でダウンロードすることが可能です。 ただそれが許されていることなのかわかりませんし, ダウンロードのファイルが doc.ファイル(Word ファイル)なのでウィルスに感染される可能性も否定できないため積極的にここでそのサイトのアドレスをお伝えすることはしません。 それでも―という方はグーグルあたりで Ultimo viene il corvo と検索してみてください。 まだ削除していなければそのファイルがヒットするかもしれません。


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