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アイスランド語独学ノート 

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アイスランド語の例〜ネットから収集して(3)  アイスランド語の俳句 


ネットサーフィンをしていると日本文化が思っている以上に世界中で健闘していることを知りうれしくなることがあります。 漫画やアニメ, カラオケ, そして寿司― これらは世界中に知られたりっぱな日本文化を代表するものになっています。 明かにもう日本=ゲイシャガールまたはハラキリの時代ではありません。


特に注目したいのは一昔前よりも, 言語を介する文化への関心が高くなっていることです。 具体的には漫画と俳句の浸透です。 漫画を見て日本語を勉強する動機になった若者が世界中に多くいます。 また俳句を小学生に作らせて自国の言語や日常生活への新しい見方を児童に持たせる道具としているケースも少なくありません。 今回紹介するサイト Ljóðagerð med börnum (子供と詩作)がその例です。


                        


ところで俳句はアイスランド語で hæka [ハイカ] と呼ばれているようです。 
文法的には弱変化の女性名詞で以下のように変化させています。  

単数 (不定形 / 定形) 複数 (不定形 / 定形)
主格 hæka / hækan hækur / hækurnar
対格 hæku / hækuna hækur / hækurnar
与格 hæku / hækunni hækum / hækunum
属格 hæku / hækunnar hækna / hæknanna


sushi や manga は不変化なのに haiku は haika となってこのようにアイスランド語のごとく変化しているところに文学言語アイスランド語の真髄を見るような(?)気がします。



                        


さてこのサイトでは俳句をこう定義しています。
 Hækur eru sautján atkvæða órímuð ljóð, i þremur línum. 
 (俳句は3行から成る17音節の韻を踏まない詩)


このサイトの目的は子供に詩の韻や行について教え詩作させることのようです。 その流れの中で俳句を教材として取り上げているのですが, ユニークなのは俳句を1つのパターンに当てはめて作るよう指導していることです。 それは, 1行目で「どこで」(hvar), 2行目で「なにを」(hvað), 3行目で「いつ」(hvenær)のことか, それぞれ5,7,5音節で表すこと。 そしてテーマは自然であること― というのです。 このパターンに当てはめて実際に子供が作った俳句を見ると, 俳句らしくなっていて感心します。 hækur のページにある子供の作った俳句を日本語にしてみましょう。


(1)
Í lítilli sveit
ætlar sólin að setjast
það er snemma vors
(Brynhildur 9 ára)


小さい田舎町に
太陽が沈もうとしている
今は早春
(ブリンヒルドゥル 9歳) 


語注
Í  (与格支配の前置詞) 「(場所)に,で」
lítilli (形容詞 lítill の強変化・女性形単数与格) 「小さい」
sveit (女性名詞 sveit の単数与格不定形) 「地域,地区, 田舎」
ætlar  (動詞 ætla の直説法・現在3人称単数) 「意図する」 
     ここでは að +原形不定詞を伴ない未来を表す。
sólin (女性名詞 sól の単数主格定形) 「太陽」
að (不定詞を作る小辞)
setjast (動詞 setjast の原形不定詞) 「沈む」
það  (指示代名詞 sá の中性形単数主格)  「あれ」 
er (動詞 vera の直説法・現在3人称単数) 英語の be 動詞にあたる。
snemma (副詞) 「早く」
vors (中性名詞 vor の単数属格不定形) 「春」


(2)
Í garði mínum
falla blöðin af trjánum
alltaf á haustin
(Hulda 11 ára)


私の庭に
木から葉が落ちる
いつも秋には
(フルダ 11歳)


(語注)
Í    (与格支配の前置詞) 「(場所)に,で」
garði  (男性名詞 garður の単数与格不定形) 「庭」
mínum (所有代名詞 minn の男性形・単数与格) 「私」
falla  (動詞 falla の直説法・現在3人称複数) 「落ちる」
blöðin  (中性名詞 blað の複数主格定形) 「葉」
af  (与格支配の前置詞) 「〜から」
trjánum (中性名詞 tré の単数与格定形) 「木」
alltaf (副詞) 「いつも」
á  (対格支配の前置詞) 「(時間)に」
haustin (中性名詞 haust の複数対格定形) 「秋」


(3)
Spegilslétt vatnið
fiskur rýfur kyrrðina
kvöld seint í júlí
(Ókunnugur)


鏡のような湖
魚が静寂を破る
7月の遅い夕時
(詠み人知らず)


(語注)
spegilslétt (形容詞 spegilsléttur の強変化・中性形・単数主格) 「(水面が)鏡のように静かな」 
vatnið  (中性名詞 vatn の単数主格定形) 「水」「湖」
fiskur (男性名詞 fiskur の単数主格不定形) 「魚」
rýfur (動詞 rjúfa の直説法・現在3人称単数) 「破る」
kyrrðina (女性名詞 kyrrð の単数対格定形) 「静寂」
kvöld (中性名詞 kvöld の単数主格不定形) 「夕方」
seint  (形容詞 seinn の強変化・中性形・単数主格) 「遅い」
Í  (与格支配の前置詞) 「(時間)に」
júlí (男性名詞 júlí の単数与格不定形) 「7月」



教師用の指導マニュアルには芭蕉などの句のアイスランド語訳が4つあります。 その中から2つ語注を添えて引用します。


(4) 正岡子規の「夕風や 白薔薇の花皆動く」のアイスランド語訳:
Kvöldgolan svala
kemur þeim til að skjálfa
hvítu rósunum


アイスランド語の直訳「涼しい夕風が 揺らしている 白い薔薇を」
語注
kvöldgolan  (女性名詞 gola の単数・主格定形)  「夕風」 < kvöld (夕方)+ gola (そよ風)
svala (形容詞 svalur の弱変化・女性形・単数主格) 「涼しい」
kemur (動詞 koma の直説法現在3人称単数) 「来る」
þeim (女性名詞を受ける人称代名詞 þær の複数与格) 
til (副詞) ここでは熟語の一部
að (不定詞を作る小辞) ここでは熟語の一部
kemur þeim til að skjálfa 「それらを揺らす」 
 < koma +与格+ til að +動詞の原形不定詞 「〜を..させる」
skjálfa (動詞 skjálfa の原形不定詞) 「揺れる」
hvítu (形容詞 hvítur の弱変化・女性形・複数与格) 「白い」
rósunum (女性名詞 rós の複数・与格定形) 「薔薇」



(5) 小林一茶の「悠然として山を見る蛙かな」のアイスランド語訳:
Froskurinn starir
á fjallið, og hann lætur
sér fátt um finnast.


アイスランド語の直訳「蛙が見つめている 山を,そして 動じない」
語注
froskurinn  (男性名詞 froskur の単数主格定形) 「蛙」
starir (動詞 stara の直説法・現在3人称単数) 「見つめる」
á  (対格支配の前置詞) ここでは  starir á 〜で「〜を見つめる」
fjallið (中性名詞 fjall の単数形対格定形) 「山」
og (接続詞) 「そして」
hann (人称代名詞 hann の単数主格) 「彼」
lætur  (動詞 láta の直説法・現在3人称単数) 「置く」「させる」 
sér (再帰代名詞) 「彼自身」
fátt (形容詞 fár の強変化・中性形・単数目的格) 「反応がない」
um (対格支配の前置詞) 「〜について」
finnast (動詞 finnast の原形) 「〜であることがわかる」
láta sér fátt um finnast  「動じない」「感動しない」


                        


参考 詩関係のアイスランド語 
ljóð  n (-s, -)  詩
kvæði  n (-s, -) 詩
hetjuljóð  n. (-s, -)  叙事詩
lýriskt ljóð n (-s, -)  叙事詩
skáld  n (-s, -) 詩人
rím n (-s) 韻
rím/a f (-u, -ur)  アイスランドのバラード
hljóð  n. (-s, -)  音
orð n (-s,-) 語
lína f (-u, -ur) 行
röð f (raðar, raðir) 行
tvílína f (-u, -ur) 2行詩
þrílína f (-u, -ur) 3行詩
atkvæði  n (-s, -) 音節
skrif/a v (acc)(-aði) 書く
lesa  v(acc)(las, láus, lesiði) 読む
hljó/a v (-aði) 聞こえる
rím/a v (acc)(-aði) 韻を踏む
órím/aður adj (f -uð) 韻を踏まない 
órímuð ljóð  n. (-s, -)  韻を踏まない詩


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