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 デンマーク語はどうですか?
Hvad med DANSK?
〜趣味のデンマーク語のススメ〜



デンマークの小噺・ジョーク(1) モルボ話
デンマークには『モルボ話』(Molbo historier) というのがあります。 これは1700年ころに生まれた民話の類で, 主人公はユトランド半島中央東部のモルス(Mols)地方の住民(=モルボ)。 その住民たちは皆, 天然ボケをしている田舎者という設定になっているのです。 


『モルボ話』は作者不明の口承文芸ですが, そのうちの13話を1771年にヴィボー(Viborg)という都市の出版社が本として出版したのを皮切りに, 次々と複数の出版社から本が出ました。 そのうちに新作が付け加えられ, その伝統は現在も受け継がれています。 ただし今はモルスではなく, モルスに程近いデンマーク第2の都市オーフス(Århus)の住民が馬鹿話の主人公になり, 『オーフス話(Århushitorier)』と呼ばれています。


古典的なモルボ話は挿絵つきの本や絵本として伝わっているので, デンマーク人はその「名場面」が描かれている絵を見れば何の話かわかるようです。  古典的なモルボ話はオチもわかっているわけですが, 日本の古典落語と同じように何度聞いたり読んだりしても飽きないおもしろさがあるらしく一つの文化財である感があります。 ここではそのようなデンマーク人なら誰もが知っている古典的なモルボ話を幾つか記してきます。


                      


■ 太陽
3人のモルボがある夕方, ある町から帰路を歩いていた。 そして日が沈むのを見るとどうやって太陽は西に沈んだのに東から昇るのかということが話題になった。
自分が一番物分りがいいと思っている年長の者が言った。 「夜の間, 太陽は俺たちの下に潜っているのさ」
「違うね」 別の者が言った。 「太陽は北の方に行っているんだ。 あまりにも遠くに行ってしまうからら俺たちは見ることができないんだ」
「お前たちふたりともバカだね」3人目が説明した。 「実際はね, 夜になると太陽は昼通っていた道を戻っているのさ。 ただ真っ暗だから俺たちは見えないだけなんだよ。」


■ ボート
1人のモルボがボートを買った。 しかしひどくにわか雨が降り, ボートの半分まで雨水が入ってしまった。 「こんなに水が入っていては海に出られない」 男は隣人に訴えると, 彼は水をボートから出すようにアドバイスした。 「穴をボートにあけて水を出せばいいじゃないか」
ボートの主は「それはいい」と早速言われたように穴をあけたが水は一向に出ていかない。 男は腕組しながら呟いた。 「うーむ。 穴が小さすぎるのかな」


■ 塩漬けニシン
モルボたちは塩漬けのニシンが大好きだったがニシンを大樽に入れてオーフスから持ってこなければいけなかった。 それでいい考えが浮かんだ。 養殖したらどうだろうか。 そうすればオーフスまで行く時間が省けるし他のことに旅費を回すことができる。 
それで養殖用の塩漬けニシンを作ろうと樽を村の溜池(注)の中に入れた。 翌年どんなにたくさん池に塩漬けニシンがあるか見ようという時は興奮は絶好調に達していた。 しかし驚いたことに一匹も塩漬けニシンはなかった。 その代り大きな太ったウナギが一匹いた。 「なんてことだ。 こいつらが食っちまったにちがいない。 一つ懲らしめよう。」
罪人に死刑の判決が出た。 一人の老いたモルボが何て罪深いことをその罪人がしたのか思い出した。 「こいつを溺死させよう。 絞首刑にするより苦しみは大きいぞ。」 彼は考えた。 それで皆船で沖合いに出てそのウナギを海に投げた。 ウナギはひどく苦しんでいるかのように体をよじらせた。 「これが一番の懲らしめだ」モルボたちは大きな声で快哉の声をあげた。
(注)溜池(gadekær 直訳:通りの池) 画像 魚の養殖をしたり火事の際の用水池の役割をした。 冬は子供たちのスケートリンクになる。


■ コーヒー
あるりっぱな紳士がモルスにやって来て彼らの中から一人を臨時の召使にさせた。 しかしモルボの中にコーヒーのフィルタを知っているものは一人もいなかった。 最初の朝, りっぱな紳士は召使の入れたコーヒーを吐き出した。「ぺっ。 なんて味だ。 どうやってコーヒーを入れたのだ」
紳士がコーヒーポットの中を見るとそこには靴下が入っていた。 「なんと, まさかお前私の上等の絹の靴下をだめにしたのではないだろうな」と憤怒して紳士は尋ねた。 「いいえ。 私はその古いウールの靴下を使いました。 旦那さんが昨日履いていたやつです。」


■ ライ麦畑のコウノトリ
ある夏, モルボはライ麦畑にコウノトリが訪れていることを知った。 「これはまずい。 エサのカエルを求めてコウノトリが畑をあっちこっち歩き回って麦を踏んでしまうぞ」
そこでボルボたちは集まって対策を練ることにした。 と言ってもただ頭をかしげてじっとしているだけであったが。 長い沈黙の時が過ぎ, ある男が叫んだ。 「そうだ, 家畜飼いに追い払ってもらおう。」 それはいい考えだと一同乗り気になったとき, 別のモルボが言った。 「しかし家畜飼いもコウノトリを追い払うために畑を歩き回ってしまうのじゃないか? それじゃ結局麦がだめになってしまうぞ」
また長い沈黙があった後, 村一番の賢者が言った。 「家畜飼いを担げば, 麦が踏まれることはない!」 これでコウノトリへの対策は決まった。 力自慢のモルボが6人, はしごを横にして御輿のように担ぎ, その上に棒を持った家畜飼いが座ってコウノトリを追い払ったのである。 畑を右往左往しながら。


■ 教会の鐘
ある男がモルボをからかおうと戦争が起きたから大事なものを隠せと言って来た。
モルボたちは, まず何よりも大切な教会の鐘を隠すことにした。 しかしどうやって?
地面に穴を掘って埋めるのは神聖な鐘にとって失礼だ。 森に隠したのでは木の葉が落ちた時に見つかってしまう。 喧喧諤諤やっていると, 自分こそ一番頭がいいと自負しているモルボが言った。 「海に沈めよう」
苦労して教会の鐘を塔から下ろすとモルボはそれをボートに乗せ, 沖合いへと漕ぎ出した。
適当なところで鐘をボートから海に投げ入れて, さあ帰ろうとしたとき, 一人のモルボが叫んだ。 「隠したのはいいけれど, 戦争が終わって引き揚げるとき, どうやってここに静めたことがわかるんだい」
ボートにざわめきが起きたとき, 例の頭がいいと自負しているモルボが言った。 「印をつければいい」 そうしてナイフを取り出すとボートの脇に「↓」を彫った。
見事な処理にモルボたちは感動し, 大切な仕事を終えた満足感を持って意気揚々とボートを漕いで岸へと向かった。 後は戦争が終わって教会の鐘を引き上げる日を待つだけである。


(つづく)

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