本館もくじへ 別館もくじへ 新館もくじへ |
|---|
| 知って得する歌・歌詞の形式(form) | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 「作詞・作曲家やシンガー・ソングライターはどうやって歌を作るのだろうか。」 というのは音楽ファンなら一度は考えることではないでしょうか。 まして自分でも歌を作ってみたいとすれば, 何か理論がないか探し求めたくなるものです。 欧米の作詞・作曲の指南書は, 歌の形式(form)について必ずと言ってよいほど触れています。 歌の形式というのは, いわば歌を作るためのテンプレートのようなもので, このテンプレートの中に言葉やメロディを当てはめて歌は作られるということになります。 カーリー・サイモンは, 自身のホームページのコンテンツ How Lyrics Work (どうしたら詞はうまく行くか)で Two Hot Girls と In Honor of You, George の制作過程の種明かしをしています。 http://www.doubletakemagazine.org/articles/html/simon/index.php 曰く「ストーリー性のある行を4つの単純なABAB型の連にし, 最後のコーラスの前にブリッジを入れて」という調子なのですが, これからもプロが歌を作るときは, ただ涌き出る感性に任せるのではなく型にはめて作っていくのだということがわかります。 無限に広がる創造の世界と型にはまった形式。 この2つは, 水と油の関係のように思えますが, 止め処もなく涌き出る泉だからこそ, 一つの作品にまとめるためにそれを入れておく容器が必要だと考えれば, これらが相容れないものではないことがわかります。 特に数分で完結し, しかも人々の脳裏に残り愛唱されなくてはいけない商業音楽の場合, 形式に基づいた歌は効果があると思います。 ということで, ここでは簡単に歌の形式について書いておきたいと思います。 ただし, 用語の使い方や形式の分類方法については作詞・作曲家・シンガーソングライターの間でもいろいろあります。 ここでは素人向けの作詞法についての著作の多い, Sheila Davis という人の分類を中心にまとめてあります。
以下 【verse(ヴァース) と chorus (コーラス)】 【verse(ヴァース) と chorus (コーラス)からなる歌】 【verse(ヴァース)だけの歌】 【歌詞と歌の形式】と話が続きます。 【verse(ヴァース) と chorus (コーラス)】 chorus は歌のサビ・ヤマ場・最も印象的な部分で, 多くの場合歌のタイトル中の語が使われ,また繰り返されます。 chorus は説明文で言えば主題文のようなものです。 一方, verse は主題文の裏付け,説得をする部分。 chorus が主題文として端的に抽象的に言いたいことをまとめてあるとすると, verse は冗長に具体的に言葉を並べ,chorus を支えます。 例えば「あなたのことはきれいさっぱり忘れます」というコーラス(主題文)のために「壊れた時計といっしょにあなたのコーヒーカップは捨てました。 今日は燃えないごみの日だから」といった verse (支持文)があるという具合です。 verse を辞書で調べると(1)散文に対する韻文 (2)節・連・スタンツア(一般的に「歌の一番,二番」などと表されるもの)などの意味もあります。 ここで使っている verse はこれらの意味ではありません。 また chorus も「合唱」の意味ではありません。 一人で歌っても chorus です。 【verse(ヴァース) と chorus (コーラス)からなる歌】 verse/chorus から成る歌には, ときに bridge (ブリッジ)や pre-chorus (プレコーラス)を伴うことがあります。 pre-chorus は別称がいろいろあるようです。 例えば climb (クライム), lift (リフト) , channel (チャンネル), B-section (Bセクション) など。 なおイギリスでは bridge は middle-eight と呼ばれ, bridge というと pre-chorus のことを意味するようです。 また bridge と pre-chorus をあわせて transitional bridge (トランジショナル・ブリッジ)と呼ぶ人もいます。 bridge は verse と chorus をその名の通り繋ぐ部分です。 多くは verse - chorus - verse - chorus -bridge - chorus のように最後の chorus への橋渡しをします。 ふつう4小節から長くて8小節で成り立っています。 「想い出のサマーブリーズ」は bridge のある verse/chorus 型の歌です。 chorus は Summer breeze makes me feel fine で始まる連。 verse は各連とも See で始まっています。 第1連(See the curtains hangin' in the window ), 第2連(See the paper layin' in the sidewalk), 第4連(See the smile a-waitin' in the kitchen)がそれです。 しかし第3連だけ See ... ではなく Sweet days of summer, the jasmine's in bloom で始まっています。 そしてメロディもここだけ独自なラインをしています。 これが bridge です。 一方 pre-chorus も bridge と同じく verse と chorus を繋ぎますが, verse + climb - chorus - verse + climb - chorus のように verse に付属するような形で, chorus へ展開するのが bridge と異なる点です。 例えばカーリー・サイモンの「うつろな愛」の13小節目 And all the girls dreamed that they'd be your partner They'd be your partner, and 周りの女のコはみんな夢見る。「あなたのパートナーなれたらなあ」 「あなたのパートナーになれたらなあ」 の部分がそれで, この後の chorus (You're so vain 〜)に続いて少しずつ盛りあがりながら続いて行きます。 【verse(ヴァース)だけの歌】 verse だけ歌の場合でもキャッチーなメロディ・ラインがあり,しばしばこれは繰り返されます。 これが chorus の代わりになっていますが, こちらは refrain (リフレイン)と呼ばれています。 chorus は verse とは独立した「繰り返す部分」であり, refrain は verse の中にある「繰り返す部分」なので, 厳密に言うと両者は異なります。 しかし chorus と refrain を同じものと扱う専門家や verse/chorus からなる歌詞と verse だけから歌詞という分類のしかたを採用しない専門家もいます。 例えば「夢のカリフォルニア」は複雑な歌に聞こえますが, 実際は verse が一つしかないAAA型で, 繰り返し聞こえる California dreamin' on such a winter's day は chorus ではなく verse の中の一部である refrain です。 この歌はシンプルな構造に関わらず複雑に聞こえるのは verse によってソロになったりコーラス(合唱)になったり, ソロの場合もバックコーラスのオカズの部分が際立って聞こえるなど, アレンジに工夫があるためだと思います。 AAA型は民謡やストーリー性のある歌でよく見られます。 前者の例は「スカボローフェア」。 この歌は一つの連が起承転結の4つの行から成り立っていますが, 歌詞が正確に refrain している部分は承の部分の意味のない呪文 parsley, sage, rosemary and thyme です。 また最後の行の結の部分もほとんど同じ語句で refrain されています。 しかしメロディ上は3行目の転の部分が際立っています。 一方, タイトルである Scaborough Fair 自体は第1連の最初の起の部分に現れるのみです。 いわば規範からはずれた歌詞であるのが, 民謡の素朴さと幻想的なアレンジと合わさってこの歌に独自の雰囲気を出していると思います。 ストーリー性のある歌の代表は「ビリー・ジョーの歌」です。 メロディもアレンジもシンプルですが, その分, 歌詞に焦点を合って非常に効果的です。 verse だけの歌は AAA型だけではなく異なる verse のある ABAB型や AABA 型などもあります。 ABAB型の代表として「そよ風に乗って」をあげておきましょう。 この歌を聞くと2つの最初の8小節の後でメロディ・ラインが変ることがわかります。 最初の8小節がAだとすると次の8小節はBです。 Aが verse で B が chorus ではないかと思われるかもしれませんが, B は歌詞がそれぞれ異なり chorus の特徴である同じ歌詞の繰り返しではありません。 しいて chorus があるとすれば, Ouh ouh ouh という女性コーラスの部分です。 この部分が印象的なのはいわば chorus の代わりの働きをしているからでしょう。 AABA型の代表は「アローン・アゲイン」です。 「アローン・アゲイン」ではタイトルの Alone again naturally が繰り返されますが, これは chorus ではなく refrain です。 chorus ほど歌全体の中で独立しておらずあくまでも verse の中の一部だからです。 この歌は一つの verse が長いですが alone again naturally で終わる連が A でこれは3箇所あります。 そしてAと比べると短い It seems to me that there are more hearts から What do we do? What do we do? までの連が B です。 他に AABABA型とかABAC型など変形もあります。 【歌詞と歌の形式】 メロディはいわば万国共通の言葉なので, ここはサビだとか, 歌の調子が変ったなどというのは聞いていれば感覚的につかめます。 さらに歌詞にも注目してみれば, verse や chorus , bridge などの構成と関連していることにも気付くかもしれません。 例えば, verse と chorus, bridge などの移行の際に
「うつろな愛」で見てみると次のようにまとめられるのではないでしょうか。
このように歌詞も, ただ意味は何なのかだけではなく, 歌の形式との関係にも注目するとさらに深さ・おもしろさが増すと思います。 |
||||||||||||