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z06    Timothy    (The Buoys)
 ティモシー   (ザ・ボーイズ)   
1971
     原詞・訳詞  
70年代の初めにシカゴとかブラッド・スエット&ティアーズのようなブラスが入ったバンドが流行ったことがありました。 このペンシルバニア出身のボーイズも安っぽいシカゴといった感じのアレンジと歌い方をしています。 そしてその歌は旋律だけ聞くとなんてことのなく, これがビルボード17位まで達するヒット曲とは思えません。


しかし当時の『ワイオミング・バレー・オブザーバ』というボーイズのローカル紙は, 『ボーイズが全国的なヒット』と題し,興奮気味に郷土のバンドのヒットを伝えています。 いわく『ビルボード・トップ100始まって以来のペンシルバニア北東部出身者によるヒット。』『12月3日の記事で当社記者は間違った情報を伝えてしまった。 シアトルで一週間に6,000枚売れたのではなく一日で6,000枚売れたの間違いだった。』とか『この歌が世界的大ヒットになっているだけでなく今年のグラミー賞候補になっている』とか, さらに『WEAMのDJはワシントン市がこれほど興奮したのはビートルズ以来だと伝えた。』に至っては目が点。 それほど流行りましたっけ, 『ティモシー』って。


『ティモシー』というと60年代のポップスに詳しい人なら南アフリカ初の世界的に有名になったグループ, フォー・ジャックス&ア・ジルの『ティモシー(1967)』を思い浮かべるはずです。 フォー・ジャックス&ア・ジル盤とこのザ・ボーイズ盤は同名異曲で, 歌の内容はまったく異なります。 フォー・ジャックス&ア・ジル盤は古典的な片思いの女の子の歌。


 一方, ボーイズ盤の作者は『ヒム』や『エスケープ』などのヒットのあるアダルト・コンテンポラリーの雄, ルパート・ホームズ。 発禁になるような歌を作り話題を呼んで, この新人バンドを売りこもうと目論んでいたホームズは, 料理番組をテレビで見ていてこの歌のアイデアを思いついたと後に語っています。 その彼が考えた「論争を引き起こして発禁になるようにする」テーマはカンニバリズム。 「人肉食い」だったのです。


しかし, この歌がヒットしてホームズに振りかかったのは, 1963年の8月にペンシルバニア州のシェブトン炭坑での落盤事故を揶揄しているのではないかという非難でした。 この事故では歌詞と同じく3人の坑夫が地下308フィートの穴に閉じ込められ, 2週間たってから歌詞と同じく二人だけが救出されたのでした。 ホームズはこれを否定し坑夫に対する尊敬を持っていることを強調, 最後にはこの歌は坑夫ではなくネズミが主人公なのだと言い出す始末。
実は, 現実の炭坑事故は当時地元では話題になっていたのです。 ただしそれは『人食い』ではなくカトリック的奇蹟が起きたことででした。  なんでも彼らが閉じ込められていた間, 十週間前に死んだヨハネ23世が青白い光とともに彼らのそばにずっと付き添っていたとか。 


センセーショナルな歌詞で話題になりヒットする曲は少なくありませんが, この歌の場合は, ちょっとねえ。 ブラック・ユーモアというほどでもなし, メロディもアレンジも光っているわけでもないし。  ということで何でもアリ?の歌詞の代表として登場させました。