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51   The Boxer              (Simon & Gurfunkle)
ザ・ボクサー        (サイモンとガーファンクル)
1969
  原詞・訳詞  
私が60年代末から70年代はじめのポップスで好きなのが, リズムのセクションにストリングスがうまくからんでいるアレンジの曲が多いことです。
この歌もそうで, メロディもさることながら, アレンジがイイ感じだと思います。
『ロッキーのテーマ』などと違い, ボクサーがテーマでも水彩画のように繊細で哀愁のある世界が広がるのは, サイモンとガーファンクルの歌声とともに, このアレンジの妙にあるでしょう。 ボクシングを思わせる音の演出や going home (故郷に帰りたい)と歌うところで出てくるカントリー風のギターの演出もカワイイし, ラストのストリングスの盛り上がりとかは, 私は鳥肌が出るんですけど, どんなものでしょうか。


さて, サイモンとガーファンクルの曲を聞くと冬のニューヨークの, レンガが敷き詰められた裏通りが思い浮かびます。 この歌も詞を読みながら聞いていると, 都会の冬の灰色っぽい色調の空気の中で生きているボクサー少年の姿が映画のシーンのように浮かんできます。


この歌の詞に関して作者のポール・サイモンにインタビューした記事を載せたサイトがありました。 それによると, この詞を書いたときに覚えているのは, ホテルから持ってきた聖書を飛行機の中でめくっていて目に入った workman's wage (職人の給料)という語。 これを詞に入れたそうです。 (wage は salary と違い肉体労働者の日給・週給を表すので, 私の訳詞では肉体労働で金を作るみたいな訳になっています。)
また歌に何度も出てくる Lie la lie というリフは詞が思い浮かばないので入れた苦肉の策だそうで, これを歌うたびに恥ずかしい気がしたそうです。 このリフはとても印象的で効果的なだけにこれは意外な告白でした。 


このリフの lie  は文字通りなら「うそをつく; 横になる」という動詞ですが, ラララみたいに歌詞代りに使っている意味のない言葉でしょう。
ところで, この詞には lie と lay が何回か出てくるのです。 ほら, 英語の授業でやったの覚えてますか。 lie と lay の変化。 lie - lay - lain - lying と lay - laid - laid - laying ってやつ。 前者が自動詞で「横たわる」。 前者が他動詞で「〜を置く」。 詞の中では1箇所, これを間違えている非文法的なところがあります。
田舎からニューヨークに家出してきた少年が第1人称で語る詞なので, この少年の教養にあわせてわざと非文法的なことをしたのかもしれません。


この歌詞, 結構難しいです。 直訳すると何のことやらというところが何箇所かあります。 また語の使い方として辞書の意味通りにとればいいのかわからないところも少なくありません。 
例えば5番にある  clearing 。 これは「森林を切り開いた空き地」ですが, 私の解釈では都会のビルを森に例えて, その谷間にある空き地としてみました。 また bleeding me という個所があるのですが, 辞書上は bleed の目的語を人にすると「金などを搾取する」となります。 歌のイメージからはボクサーの少年が血を流す感じなのですが, bleed は「病気の治療で人から血を抜く」というのはあっても「人の血を流す」というのはありません。 自動詞なら「血が流れる」があるのですが。 たぶん, 「金を搾取する」と「血が流れる」がいっしょになったイメージなのでしょう。 こういう感じは原詞を参照しないとわからないと思います。


他にも訳が難しい, 解釈に悩むところがありますが, その最たる所が5番。
ここだけが主語が I  ではなく boxer と fighter になっています。 boxer と fighter は誰なのか。 二人別々なのか? さらに cut him とか lay him down とある him は誰なのか。 私はこれを全部主人公のボクサー少年として訳しました。
fighter には「プロのボクサー」の意味がありただの boxer とわざと使い分けしてあるのではないかと思います。 最後のフレーズ The fighter still remains とあるのは, 歌のシメとして重要ですが, ボクサーとして生計を立てるようになった少年がふんばって都会で生きて行く「プロ根性」または「運命の悲しさ」みたいなのがあるのかなあと解釈したのですが, どうでしょうか。


ともかく今回の訳詞は, 原詞と読み比べてもらうと「?」と「!」が多いと思います。 詞の解釈, いろいろですからあくまでもこれは私の解釈ということで, 容赦ください。


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