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157     Baker Street  (Gerry Rafferty)
   霧のベイカー街(ストリート) (ジェリー・ラファティ)

1978
     原詞・訳詞
ホームズ: 
ワトソン君, どうしたのかね。 険しい顔をして何か読んでいるみたいだが。
ワトソン: 
ジェリー・ラファティの『霧のベイカー街』という歌詞を読んでいるんだけど, 変な歌詞でね。 どうもこれはゲイのことを歌っているらしいんだ。
ホームズ: 
ほう。 ちょっと私にも読ませてくれないか。
  

Windin' your way down on Baker Street
Light in your head and dead on your feet
Well another crazy day
You'll drink the night away
And forget about everything
君は千鳥足でベイカー街を歩く
頭はふわふわ 足は感覚がない
また気の狂った一日だった
君は今夜は飲み明かして
すべてを忘れるつもりだ


これは出だしだが,どうやら「君」は酒を飲み明かして憂さを晴らそうというのがわかるね。


ワトソン: 
英語の歌詞の you は誰を指しているか考えなくてはいけない。 恋人など歌で歌われている対象, 歌を聞いている人, 一般の人々… この歌詞の場合は歌を聞いてる人を指すと思うんだ。
ホームズ: 
うーん,なかなかいい推理だ, ワトソン君。 歌を聞いてる人にすれば歌の世界に聞き手を引き込むことになってそれだけ聞いている人が感情移入がしやすくなる効果があるね。 
でもなぜゲイの歌だと思うのかね。
ワトソン: 
間奏の後に別の男が出てくる連があるんだ。 それはこうなんだが。


Way down the street there's a lad in his place
He opens the door he's got that look on his face
And he asks you where you've been
You tell him who you've seen
And you talk about anything
通りを下ったところに1人の青年が住んでいる
彼はドアを開ける 例の顔つきをしている
そして彼は君に尋ねる 「どこに行って来たんだ」
君は誰に会ってきたか言い
何についてでも 話をする


ホームズ: 
このくだりからは二人は仲のいい友達という感じがするね。
ワトソン: 
そうなんだ。 それに最後の連を見てごらん。


And when you wake up it's a new mornin'
The sun is shinin' it's a new morning
You're goin'
You're goin' home.
そして目が覚める 新しい朝だ
太陽が輝いている 新しい朝だ
君は行く
君は自分の家に帰る


この男の家で一晩過ごして「君」は自分の家に帰る。 これじゃ友達というより恋人同士だね。 しかも男同士がだよ。 


ホームズ: 
ワトソン君。 君は最初にこの歌詞の you がこの歌を聞いている人を指していると指摘したね。
ワトソン: 
ああ。
ホームズ: 
そして君は男だ。 だから君はこの you が男だと思っていないかね。
ワトソン: 
・・・ 
ホームズ: 
それにこの人物は「1人で前後不覚になるまで酒を飲んでいる。 だから男だ」と決めつけていないかな。 女が大酒飲みでもいいんじゃないか。
ワトソン: 
なるほど確かに男と決めつけなくてもいいね。 
ホームズ: 
それに仮に男だとしても男が詮索するような質問を友達にしたり同じ屋根の下で一晩過ごすからゲイだなんて短絡的じゃないか。 君と僕だってこの程度のことはしているんじゃないかね。 
ワトソン: 
そうだね, 僕は固定概念に縛られていたみたいだ。 これは普通の男と女の歌だね。
ホームズ: 
読みが浅いね, ワトソン君。
ワトソン: 
え? ホームズ, 今, 君は男と女の歌だって言ったじゃないか。 じゃあ・・・
ホームズ: 
僕は男と女の歌だとは言っていない。 まあ慌てずに「君」や「彼」がどういう人物かもっと深く探ってみよう。 そのためには他の連も読まなくちゃね。 「君」についてはこんな連がある。


You used to think that it was so easy
You used to say that it was so easy
But you're tryin'
You're tryin' now
昔は思ったものだ 簡単なことだ
昔は言ったものだ 簡単なことだ
でも 苦しんでいるじゃないか
苦しんでいるじゃないか 今 


Another year and then you'll be happy
Just one more year and then you'll be happy
But you're cryin'
You're cryin' now
もう一年で 幸せになれる
たったもう1年で 幸せになれる
でも泣いているじゃないか
泣いているじゃないか 今


これから「君」は何か求めているけれど満たされていないことがわかる。
一方「彼」の方は


He's got this dream about buyin' some land
He's gonna give up the booze and the one night stands
And then he'll settle down there's a quiet little town
And forget about everything
この男の夢は土地を買うこと
酒を断ち 飲み屋に行くのを止めようと思っている
腰を落ち着かせよう 静かな小さな町に
そして嫌なことすべて忘れよう


という土地を買うのが夢で酒を断とうと考えているというくだりがあるね。 さらに次の連は

But you know he'll always keep movin'
You know he's never gonna stop movin
'Cos he's rollin'
He's the rollin' stone
でも彼がじっとしていられないことを君は知っている
彼が動くのを止められないことを君は知っている
なぜなら俺は転がってばかり
彼は rolling stone だから


とある。
ワトソン: 
まさか rolling stone って。。。この男, ローリング・ストーンズのメンバー?
ホームズ: 
いやこれは A rolling stone gathers no moss. 「転石苔を生ぜず」という諺から来ている表現に過ぎない。 職を変えてばかりいると金が貯まらないという意味の諺から「定職のない人」ということ。 今風に言えばフリータだね。
ワトソン: 
それはわかったが, これがこの男と「君」の関係の知るためのカギになるとは・・・
ホームズ: 
「君」は酒を飲んで憂さを晴らしている。 そして「彼」は酒を断とうとしている。
そして「君」は簡単だと思ったのにうまく行かないと悩み, 家がほしいけど「彼」はフリータで定職がないと嘆く。
この二人をどう思う?
ワトソン: 
似た者同士のカップルだね。
ホームズ: 
そう! 似たもの同士なんだ。 でもカップルは余計さ。
ワトソン: 
どういうこと?
ホームズ: 
二人が似ているのは当たり前。 同一人物だからさ。
ワトソン: 
え? 「君」と「彼」が? だけど「彼」は家のドアを開けて「君」を招き入れ「どこに行って来たんだ」って尋ねているぜ。 ホームズ, 君の考えは非現実的だ。 まるで幽霊話か幻想じゃないか。
ホームズ: 
その通り。 これは非現実の話なんだ。 夢さ。
ワトソン: 
夢?
ホームズ: 
そう。 出だしのところを覚えているかい。 「君」はたらふく飲んですべてを忘れてやると思っている。 それで前後不覚になってみた夢が比較的長めの間奏からあとの部分なんだ。 
ワトソン: 
なるほど。
ホームズ: 
そしてワトソン君, 君は最後にジェリー・ラファティが仕組んだトリックにひっかかったんだよ。 最後の連で, 君はてっきり「君」が「彼」の家にいてこれから自宅に帰ると思いこんだ。 しかし最後の連は, 「君」が酒に酔って寝こんだあと目覚めたシーンなんだ。 だから「彼」の家から「君」の家に帰るのではなく, これから夢に出てきた「彼」の家, つまり自分の家に帰るというオチなんだよ。
ワトソン: 
なるほど! こうすると「君」が何に悩んでいたかもわかるし, 「君」が酒を飲んでしまったことに後悔していることもわかる。 すべてが辻褄が会うね。 しかし皆がこうやって意味を解釈して聞いてるんだろうか。 もっと誤解がないように作詞することもできただろうな。
ホームズ: 
ああ, 例えば間奏のところで「君は夢を見る」と一言入れれば解釈は簡単になる。 しかしジェリー・ラファティはそうしなかった。 いいかい, この歌は『ベイカー街』が舞台なんだよ, ワトソン君。


           


【ジェリー・ラファティについて】


1978年に自作の『霧のベイカー街(ストリート)』がヒットしたジェリー・ラファティは1947年スコットランド人の母親と耳の不自由なアイルランド人の父親のもとにスコットランドに生まれました。 数々のバンドを経ましたがその中でスティーラーズ・ホイール(Stealers Wheel)時代の1973年に『霧のベイカー街』と同様英米でトップ・テン内になるヒットになった『スタック・イン・ザ・ミドル・オブ・ユー』(Stuck In The Middle Of You)をリリースしました。 


『スタック〜』は1992年の映画『レザボア・ドッグス』(Reservoir Dogs) でも使われた歌ですが, その歌詞は聞き取りが難しく歌詞サイトには複数のバージョンが見られます。(そのため今回は訳詞は断念しました) 全体に『不思議の国のアリス』のシーンをいくつか混ぜこぜにしたような謎めいた歌詞でケルト人として生まれイングランド人社会にうまく解けこめない自らの姿を歌っていると言われています。 なおラファティは『スタック〜』をボブ・ディランの真似をして歌ったためこの歌がボブ・ディランが歌っているとかカバーしているという噂が絶えません。


なおジェリー・ラファティはかつて大道芸能もしており, 『霧のベイカー街』はロンドンの地下鉄駅で大道芸人をして生活をしていたころを歌ったものだそうです。