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152    More Than I Can Say   (Leo Sayer)
 星影のバラード  (レオ・セイヤ)
  
1980
    原詞・訳詞
国立大学個別試験の英語では英文を指定された字数の日本語で要約せよ― という問題がよく出題されます。 七面倒な問題ですが, 毎年この手の問題が出る大学を受ける場合は, どうしても対策を練っておかなくてはいけません。 それには手頃な参考書がありました。 今は絶版となっている三省堂から出ていた『大学入試英語長文要約法』というのがそれです。 


著者は谷田貝常夫氏と中村保男氏。 著名な翻訳家です。 タイトル通り大学入試用のハウツー物ながら, 昨今の書店の学参売り場の棚に溢れる「○○予備校講師」執筆の参考書とは違う, 奥行きの深さみたいなものが感じられる, すっきりわかりやすい良質の参考書でした。 


翻訳家だからと言って大学受験生に理論やら理想やら理屈めいたことを書いているわけではありません。 あくまでハウツー物に徹しています。 だからそこにはいわゆる目からウロコの知識が惜しみなく披露されています。 そしてそれらは大学受験生だけでなく, また英語学習者全般だけでもなく, 国語力・表眼力が不足していると自覚している人たちにさえも役立ちます。


たとえば「連体修飾語は長い方を前に置いて訳す」。 
many concerned parents who want their children to do their best at school を訳すとき「多くの 心配性の 子供たちが学校で一生懸命にやってほしいと願う 親たち」ではなく「子供たちが学校で一生懸命にやってほしいと願う 心配性の 多くの 親たち」とする方が誤読が避けられてよい― というのですが, これはそのまま日本語で文章を書くときにもあてはまります。


           


さて今回のレオ・セイヤの『星影のバラード』(Love You More Than I Can Say) を訳そうとして, この大学入試参考書にあったそんな目からウロコの知識を1つ思い出しました。


「英語を日本語に訳すと字数は約2.5倍になる」


「英文を○○字以内の日本文に要約しなさい」という類の問題がよくあります。 そのときこの知識があれば, 要約文に入れようと思う部分の英文の語数を数えて2.5倍すれば, 日本文に訳したときの語数の目安がわかって便利です。 逆に100字の日本文に要約する場合なら 2.5で割って約40語の英文になるようなところを拾っていけばよいことになります。 


『星影のバラード』(Love You More Than I Can Say)の詞は非常にシンプルな英語からできています。 1行1行を訳すのにさほど苦労はいりません。 しかし考慮した方がよいところが出て来ます。 第2連の


  I miss you every single day
  Why must my life be filled with sorrow
  I love you more than I can say


この部分をそのまま日本語にすれば


  君がいなくて毎日寂しい
  なぜ俺の人生は悲しみで満たされていなければならないのだろうか  
  言葉で言えないほど君が好きだ


となって妙に2行目が長くて格好がよくありません。 英語が8語なのに対して日本語は30字。 英語1対日本語2.5 の法則にかなり外れています。 


私が気付いたのは『英語1対日本語2.5』 の法則は歌詞を訳すとき重要であるということです。 というのは耳で聞こえる英語の歌と, 視覚情報として目に入る日本語の文字の無理のない自然なバランスが一番よく取れるのは, やはり『英語1対日本語2.5』 の場合であるように思えるからです。 


試しに上の部分を音を聞きながら目で追うと, やはり2行目がしっくりきません。 だから訳を目で追う歌詞の訳の場合, 原詞に忠実に訳すのは必ずしもよいとは限りません。 映画の字幕スーパのようにばっさり言葉を切ってしまうこともやむおえないでしょう。


           


もう1つ, 今回のこのシンプルな歌詞の中で, どう訳せばよいのかいろいろ考えたの部分があります。 サビの1行  Am I just another guy? です。 直訳すれば「俺はただのもう1人の男か」です。 これではイマイチわかりません。 


私のこの部分の解釈は, 「君」 にあたる女性はよほど魅力があるのか, 他にも複数の男から言い寄られる経験をしてるというのが前提です。  それで歌っている「俺」は 「『ああ, またもう1人男が私を好きになった(もしくは言い寄って来た)。 でもあなたは私にとってその程度の人』と君は俺を思っているのだろう?」と嘆いている―というのが私の解釈です。 つまり Am I just another guy who loves you? または Am I just another guy who makes approach to you?  の意味と解釈しています。


「俺はただの君の取り巻きの一人なのか」とか「俺はただのキープなのか」という解釈もしましたが, とりあえず上のような意味合いとして訳しました。 もっともこのようにすると説明的な部分が入るために『英語1対日本語2.5』の法則から思いっきり外れてしまったのですが。 思う通りに訳はできないものです。



           


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