eigo21トップページへ  休憩室へ



本館もくじへ  別館もくじへ  新館もくじへ


148    Good Time Charlie Got the Blues  (Danny O'Keefe)
 グッド・タイム・チャーリ  (ダニー・オキーフ)
1972
    原詞・訳詞
70年代になると誰もが知っている「ああ,あの歌」というのが減って行きます。 今回取り上げる『グッド・タイム・チャーリ』もその一つ。 1972年にビルボードで9位まで上がったものの, おそらく検索してまでこの曲を探し求めている人は稀有な存在でしょう。 しかし聞いたことがない方は一度聞いてみると良いかと思います。 地味ながらシミジミした趣のある「珠玉の小品」であることがわかるはずです。


この歌を作り演じたダニー・オキーフはアメリカ・ワシントン州生まれ。 年齢は不詳ですが1960年代半ばに音楽活動を始め, 1966年にシアトルのローカル・レーベルから初のアルバムをリリースしています。 バッファロー・スプリングフィールドのマネージャに勧められアトランティック・レコードのアーメット・アーティガン社長(会長?)と電話でのオーディションを受け合格。 1971年にコティリオン・レーベルからデビュー・アルバムを出し, 翌1972年にこの『グッド・タイム・チャーリ』がヒットしました。


『グッド・タイム・チャーリ』が唯一のヒット曲のため世間一般には一発屋のカントリーシンガーと思われています。 しかし, 実は玄人好みのシンガー・ソングライターで, この『グッド・タイム・チャーリ』をエルビス・プレスリがカバーしているのを始め, 彼の作品はジャクソン・ブラウン("The Road"), レオ・セイヤ("Magdalena"), ジュディ・コリンズ"Angel Spread Your Wings")などにも歌われています。 


ダニー・オキーフは決してカントリーシンガーではありません。 ジャクソン・ブラウンの名前が出ましたが, ダニー・オキーフはちょっとジャクソン・ブラウンを彷彿させる声質とスタイルと, そして社会でのスタンスを持っている硬派の歌手と言うことができそうです。 彼のオフィシャル・サイトは自ら執筆しているらしく, コーヒー栽培のために破壊される森林や鳥たちを守るという彼の環境問題への取り組みも書かれています。 このホームページでは自身のレーベル Coolwater から2003年に出したアルバム Don't Ask の試聴ファイルを聞くこともできます。
ダニー・オキーフのオフィシャル・ホームページは google の検索ページのトップにありますのでそこから入って見てください。 



           


【歌詞について考察】


(1) 今(現在2006年2月)との不思議な共通点


この歌は今流行りの言葉で言う「負け組」の歌です。
まず主人公の暮らす町は, 平成の大合併とやらで大きな町に吸収されてしまったような, 物悲しい町。  いずれ町にある唯一の郵便局は閉鎖されてしまうでしょう。


そんなうらぶれた町に住んでいる主人公も「負け組」に属しています。 ただこの男の場合, 貧乏籤をひいて構造改革の犠牲者になったわけではなく, 単に遊び呆けてしまったからという分の悪い負け方。  ついでながら, この男の年齢は33歳。  自らの過ちのため「勝ち組」の牙城から留置場へ転落しその固いベッドで一炊の夢を見ているであろう例のお方と奇しくも同じ年。 33歳は女の大厄だそうですが, 男にもそれは言えるのでしょうか。


(2) どの町が舞台か


作者のダニー・オキーフの出生地はワシントン州スポケイン市とウエナチー市の2つの資料がウエッブ上に浮かんでいます。 本人のサイトにはバイオグラフィの類がなく確かめようがありません。 イメージ検索で見る両市の姿からはウエナチー市のほうがこの歌の舞台としても良いような風情をしています。 
google イメージ検索 Spokain   Wenatchee


歌の中の男の暮らしている町は, 多雨な気候の町のようです。 試しにスポケイン市とロサンジェルスの1945年から2005年の四季の平均総雨量を, アメリカ合衆国の気温と雨量のデータを検索できる National Climate Data Center というサイトを利用して調べてみました。 その結果


スポケイン ロサンジェルス
春(3〜5月) 3.89 2.88
夏(6〜8月) 2.26 0.15
秋(9〜11月) 3.77 1.96
冬(12〜2月) 5.31 7.31
年間 15.20 12.26
単位インチ


インチで言われてもピンと来ませんが, ワシントン州は西岸海洋性気候, カリフォルニア州は地中海性気候で日本と比べれば年間降水量は断然少ないでしょう。 ただこの2つの気候区で比べれば夏と秋はスポケインの方がロサンジェルスより雨量は多いですから多少, この歌の歌詞にあるような状況が言えないこともありません。


(3) Good Time Charlie とは


 good time Charlie は一般的な辞書には出ていないですが固有名詞が普通名詞化したものと見ることができます。  good-time Charlie に不定冠詞をつけて a good-time Charlie で検索すると少ないがらヒットします。 その用例から good-time Charlie とはどういう人物かを推測してみましょう。


(ジョニ・ミッチェルが語るデビュー前のエピソード) 
I was pretty much a good-time Charlie. I was a bad student. I failed twelfth grade. I did my book reports from classic comics.
「私はかなり good-time Charlie でした。 成績の悪い学生で12年生は落第。 古いマンガで読書感想文なんか書いたの。」


(父親の思い出の文)
He was a "Good Time Charlie" in every respect - lost stripes on at least one occasion as a result! He loved to dance, had a pleasing singing voice and enjoyed fishing and hunting
「父はあらゆる点で good-time Charlie でした。 結果として少なくとも一回は軍で降級の憂き目に遭っています。 ダンスが好きでいい声をしていたし, 釣りも猟も楽しんでいました。」


(ある歴史上の人物の評)
Steele's personality could best be described as that of a "Good Time Charlie". He was convivial, generous to a fault, and a lover of food and drink. His dissolute lifestyle led him into debt on more than one occasion.
「スティールの性格は good-time Charlie のそれとすれば一番よく説明がつく。 彼は浮かれ騒ぎが好きで, 欠点になるほど気前が良く, 飲み食いの好きな男だった。 その放埓な生き方のせいで2回ならず借金を負うことになった。」


最後の用例がズバリ good-time Charlie の意味を定義しているようです。 「遊び呆けている人, 遊び人, 放蕩者」ということのようですが, 他の用例と合わせると, 必ずしもマイナスのイメージではなく, 「いいやつ」的なニュアンスを持っていると思われます。 なお Charlie は Charles の愛称であり, Charles の語源がゲルマン基語の「成人男性」から来ていることから Charlie は「男」を意味し特定の人名から由来した表現ではないのではと思います。


good-time Charlie は普通名詞または a +固有名詞で「グッド・タイム・チャーリみたいな人」と見るか, またはこの歌は冠詞がないことからズバリ「グッド・タイム・チャーリー」という人名(あだな)とするかは人それぞれの好み, 解釈にゆだねることになるでしょう。 この歌のリフレインである Good-time Charlie's got the blues を私は「道楽野郎も ブルーになるさ」と訳しましたが, 本当は耳から入る英語と見た目の日本語からは「陽気なチャーリも ブルーになるさ」としたいところなのです。



           


【発音から歌を分析する】


この歌は妙に鼻にかかったダニー・オキーフの英語が耳に残ります。 それはなぜでしょうか。


この歌の詞は 143語 でできています。 gotta を got to と表記すれば2語になるし thirty-three を2語と見ればもう少し語数は増えますが, とりあえず143語としてみます。  そして「母音+m/n/ng の鼻音」で終わる音節の語を取りだし, その頻度を数えてみます。 
goin'(1), movin'(1), leavin'(2), wastin'(1), win(2), tellin'(1), thing(1); plane(1), rain(2), pain(1); aroun'(2), town(3), down(1); time(6), mine(1), find(2), sun/shine(1)/(1) ; long(1); can't(1), some(6), and(1) 
カッコ内の数字は頻度。 sunshine は2音節が鼻音で終わる音節ということで2語扱い。


以上の22語がのべ39回この歌に現れています。 つまり143語中39語が鼻音の音節で終わる語と持つということで割合にすると27%。 3分の1近くの語が鼻音の音節で終わっているということになります。 ダニー・オキーフはこれらの音節や I know の I のように鼻音が続く母音も含め, 鼻にかけて発声しています。 ダニー・オキーフの鼻にかかった英語が耳に残るのはそのせいであり,この歌を柔らかくまた気だるい感じに仕上がっている理由かと思います。


ヨーロッパ人の中にはアメリカ人の発声の特徴をその鼻声にあると見ている人がいます。 そう思っているヨーロッパ人がこの歌を聞くと典型的なアメリカ人の歌であり, いかにもカントリーだと思うでしょう。