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139    Johnny, Get Angry    (Joanie Sommers)
 内気なジョニー   (ジョニー・ソマーズ)   
1962
   原詞・訳詞  
詳しい詞の分析
ロサンジェルスの西部, 太平洋岸にあるベニス市は,タバコで財をなしたアボット・キニーが,イタリアのべニスを模して1905年にリゾート地を作ったのが発展した観光都市。 ベニス市を紹介するホームページ(Webカメラ,写真等[英語])


ベニスを模した町並みや船の形をしたカフェやダンス・ホール,遊園地などは今はありませんが,カリフォルニアの太陽のもと,観光客は海水浴をして,日光浴をして,サーフィンをして,ストリート・パフォーマを見て,露店を冷やかしながら散策をしています。 そうそう70年代はローラースケートも流行っていました。 


このドアーズの故郷でもあるベニス市にあるベニス高校は1911年に開校したベニス・ユニオン工芸高校が前身。 1978年の映画『グリース』の舞台ライデル高校のロケ地になった美しいキャンパスを持つ由緒正しい高校です。


今から45年程前に, このベニス高校のダンス・バンド部で歌っていたのがジョニー・ソマーズです。(1942年ニュー・ヨーク州バッファロー生まれ)


彼女は1959年17歳で当時新興レーベルだったワーナー・ブラザーズと契約するチャンスを得ます。 その最初の仕事が日本でも放映されていた『サンセット77』のスター,エド・バーンズと(コニー・スティーブンスの代役として)デュエット曲(Hot Rod Rock    I Didn't Dig You, Kookie)を録音することでした。 さらに自らもこの人気番組に何度か出演もしました。 


60年代前半は,ロサンジェルスを舞台にした『サンセット77』そしてビーチ・ボーイズのサーフィン・サウンド。 60年代後半はサン・フランシスコで生まれるフラワーチルドレン。 さらに下って70年代には『刑事スタスキー&ハッチ』『白バイ野郎ジョン&パンチ』。。。60年代70年代の明るくまばゆく世界中から憧憬されていた時代のアメリカは,すなわちカリフォルニアだったという気がします。 (それと比べて今はねえ。。) 


さて,まばゆく輝くジョニー・ソマーズは1962年『内気なジョニー』をヒットさせます。
これは歌詞もメロディもティーン受けするアイドル路線です。 しかし1960年に最初のソロ・アルバム Positively the Most は同世代の10代からではなく, オジサン世代のジャズ界から「過去15年で最大の発見」と言われるほどの賞賛を得ます。
フランス・ギャルもアルバムではかなりジャズっぽい曲を歌っていることを考えると,60年代前半のジャズ・シーンに10代の少女歌手が活躍していたのでしょうか。


ジョニー・ソマーズの稀有なところは, シングルはティーン向けに, アルバムはアダルト向けに見事にターゲットを分けて作っていたところです。
だから『内気なジョニー』を聞いただけではジョニー・ソマーズの評価はできません。
ここでジョニー・ソマーズのアルバムを試聴してみましょう。
例: Look Out! It's Joanie Sommers   スクロールして中ほどにソング・リストあり。 その他のアルバムの試聴
確かにこれはアイドル・ポップスなどではありません。 10代の少女が歌っているとは思えない大人の世界がそこにあることがわかります。


さらにジョニー・ソマーズはミュージカル『バイ・バイ・バーディ』の一曲『ワン・ボーイ』のヒットを出し,また1965年には彼女の最高傑作と賞されるボサノバを取りいれたアルバム Softly the Brazilian Sound をリリースします。


またペプシ・コーラのCMのジングル(広告文句をアナウンスすること)のキャラクタとして長期契約をしますが, 60年代終わりには早々と結婚し芸能界から引退していまいます。 ただ現在もときどきクラブなどで歌っているようです。


            


『内気なジョニー』について
アメリカの作詞家の大御所ハル・デビッドの作品。 ハル・デビッドというとバート・バカラックとのコンビによる大人向けの歌詞が多いですが,これはシャーマン・エドワードと組んだティーン向けの作品。


シャーマン・エドワードは元歴史の先生であり,元俳優であり,リサ・カーク,エディ・フィッシャなどのピアニストであり,ベニー・グッドマンやルイ・アームストロングなどのバンドにもいたという変った経歴の作曲家でハル・デビッドとはサラ・ボーンの  Broken-Hearted Melody でも仕事を共にしました。


アレンジはスタン・アップルバウム。 ニール・セダカ,ベン・E・キング,ドリフターズ,コニー・フランシスなどのヒット歌手ややベニー・グッドマンやグレン・ミラーといったジャズ・バンドのアレンジをしたり,ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団やロンドン・フィルハーモニー管弦楽団などに曲を提供した作曲・編曲家です。
40年以上も前の曲ですが今聞いてもさほど古さを感じないのは,アップルバウムの斬新なアレンジに負うところが多いと思います。 
なお間奏の滑稽な感じを出している楽器はカズーと思われます。


            


最後は歌詞について
どうせ歌は虚構の世界, それなら男も女も理想の姿に描くのがふつうですが, この歌のジョニーは友達に恋人を取られそうでも何もしないダメ男という破格のキャラをしています。 そんな恋人に「私」は説教するというシチュエーションの歌で,同時代に流行った『アイ・ウィル・フォロウ・ヒム』とおもしろい対称をなしています。


このような「男女逆転」の風潮はこの頃から目立ち出したのでしょうか。
1964年からアメリカで放映が始まった『奥様は魔女』のサマンサとダーリンもしっかりものの奥さんとちょっと頼りない旦那さんの「男女逆転」のコメディでした。


テレビ番組が出てきたのでついでに一つ。
歌詞の途中に I want a caveman. 「私は穴居人がほしい」というのがあります。 これは一つ前の I want a brave man 「私は勇敢な男がほしい」と韻を踏むための一節ですが, アメリカで1960年9月30日から1966年まで続いたアニメ『原始家族フリントストーン(The Flintstones )』を連想させます。 ひょっとしたらハル・デビッドはこのアニメがインスピレーションとなってこの一節が出たのではないかと想像するとおもしろいと思います。


            


『内気なジョニー』は非常に形が整っている歌詞です。 それが古典的な響きの歌(人によっては古臭い歌)となる理由でもあるでしょう。
ともかう今回はちょっと詳しくこの歌詞の作りを見てみたいと思います。


まず全体の構成。 これは典型的な 「番または連(verse)」と「コーラス=歌のサビのある連で何度か繰り返される部分(chorus)」から成り立っています。
また音韻も古典的に各番は1行目と2行目,3行目と4行目でそれぞれ韻を踏みんでいます。 (1番 through/do, head/dead;  2番  me/constantly, speak/meak;  3番 who/to, course/boss)


第1連の1行目でいきなり Johnny, I said we were through (ジョニー, 私たちの関係は終わりだと私は言った。)と始まり, ただならぬ出来事が起きていることを聞き手に知らせます。 しかもジョニーと呼びかけることで, これから「私」と「ジョニー」の間のいざこざを, 恋愛ドラマの1シーンを見るかのように聞くのだな, という聞き手側の心構えができます。 この1行で「つかみはOK」というわけです。 


『内気なジョニー』は一方的に「私」がジョニーに話しかける(説教する)歌詞ですが, 1番の3行目に You stood there and hung your head(あなたはそこに突っ立って 頭をがっくりさせてる)という一節を入れたことでジョニーの様子もわかるようになっています。 


第2連では every time (〜するごとに)という接続詞から始まり,ジョニーの気弱な性格を物語る逸話が始まります。 ここではフレディという固有名詞が登場し虚構の歌に具体性・信憑性を出す演出をしています。  この人物については  cut in constantly(絶え間なく中に入りこんで来た)や When he'd ask(ダンスの相手になってくれと頼んで来たとき)からジョニーと違って積極的で図々しい性格をしていることがわかります。
一方, ジョニーは you'd never speak(あなたは決して口をきかなかった)という部分から消極的で頼りなさそうな性格であることがわかります。 また過去の習慣を表す would を使っていることや not ではなく never (決してない)を使っていることから「私」の苛立ちを感じさます。


第3連は every girl という出だしです。 今度は一般的な女の子の男性観などを引っ張り出します。
Every girl wants someone who she can always look up to (女の子ならだれかいつでも尊敬できるような人がほしいもの。)
とまで言われると男の沽券に関わりますね。 ここまで言うとジョニーだけでなく歌の聞き手にも「私」, つまりジョニー・ソマーズへの反感を買ってしまいます。
それで次の行に
You know I love you, of course (あなたを私が愛しているのをもちろん知っているでしょう?)
を入れてこの歌に救いを出したのです。 この1行だけで今までの説教がすべて帳消しになり, 「私」の印象がぐっと良くなります。 まだ二人の間には希望があるという安堵感みたいなものを聞き手は持つことができます。
さらに
Let me know that you're the boss
ねえ教えて あなたが私を支配できるってことを。

と you're the boss (さしずめ「あんたが大将」という感じでしょうか)という言葉を使って男を立てます。 「私」はかなりしたたかです。


コーラス部は第1行目と2行目の mad/had の韻を踏む部分が「マッ」「ハッ」と聞こえますが,きっぱりと強い響きで「私」の苛立つ気持ちが伝わってくるようです。
これに続く brave man/cave man の2箇所の韻を踏む場でサビの高音部に移り, 1拍の置いた後, 彼女の声だけで, ちょっと哀愁を帯びた旋律の1小節 Johnny, show me that you (ジョニー,私に見せて)と歌った後 care, really care for me (好きだと言うことを, 私を好きだと言うことを)と同じ言葉を繰り返して切なさを出しています。


そして最後は Johnny,  Johnny ... という呼びかけを繰り返し, また歌い方も甘えた感じにして「私」のジョニーへの思いを伝えてフェイド・アウトします。


どうでしょうか。  さすがにアメリカを代表する作詞家ハル・デビッドの作品だけのことはあると思いませんか。