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132   Alison  (Elvis Costello)
 アリソン (エルヴィス・コステロ)
1977
  原詞・訳詞  
この歌はメールでいただいたリクエストなのですが, 1977年代デビューの歌手となるとそろそろ私の守備範囲から外れてきます。 それで今回このために私は図書館から The Very Best を借りたという次第です。


そこに収められている曲は60年代ブリティッシュ・インベージョン時代風(Tokyo Storm Warning) レゲエ風(Watching the Detective) バブルガム風(Pump It Up) ポップ・アイドル風(Oliver's Army) カントリー風(Good Year for the Roses) ,フォーク風(I Want You) , そしてバカラック作品の大人の男性ヴォーカル風(God Give Me Strength)と,さしずめポップスの百貨店という感じ。 


『アリソン』の場合,  私はソウル・バラード風と見ました。 
2拍目に出てくるドラムのサイド・スティックがスローバラードのせつなさを出していますが, ギターの爪弾きはオーティス・レディングのドック・オブ・ベイを思わせます。 
黒人風のネチっこい発声で歌おうとしている感じがしますが,声質が白人のそれなのでバカラックの God Give Me Strength やアズナブールの She が一番コステロが素直に歌えると私は思うのですけど。


で, 私はこのCDを聞いて, いかにも元コンピュータ・プログラマらしい感じを持ちました。 よく言えば器用で多才。 悪く言えばいろんな音楽をコピペした感じ。


イタリア系を思わせる芸名もエルビスはエルビス・プレスリから, コステロは母親の旧姓からつけたそうですが,この辺りも元プログラマらしい「コピペ」感覚がすると私は思ったのです。 
なお本名 Declan McManus 。思いっきりゲール語系(スコットランド,アイルランド系)の苗字です。 



名前といえば今回の歌のタイトル Alison は Alice のフランス語版だそうで, 調べてみるとこの名を持つアメリカ女性は2,000人に一人。 
順位にして第347位。
そんなにアリソンな名前ではありません。


し〜ん


(コホン,失礼)
試しに Alison でイメージ検索したらこういうことになりました。 
この歌のイメージにあうアリソンさんはいますかどうか。。。


           


さてエルビス・コステロは1954年8月25日ロンドン生まれのリバプール育ち。 父親ロス・マクマナスは歌手で。。というようなエルビス・コステロについての詳細は他のサイトに任せるとして, 当サイトとしては「アリソン」の歌詞について考察に終始したいと思います。


エルビス・コステロは曲だけで語ってはいけないアーチストのひとりでしょう。 
エルビス・コステロの詞は謎めき不可解です。


たとえばこの歌。 昔付き合っていた女性と久しぶりに会った主人公の「俺」がその女性への思いを切々と語っているのはわかりますが,サビの部分で訳がパタッと止まってしまいました。


Alison,
I know this world is killing you.
Oh, Alison,
My aim is true.


の部分です。


これは騙し絵のようなものだと思うんです。 ほら下のような図, よく錯視の話で出てきますよね。 ある瞬間に花瓶が見え, またある瞬間にふたつの顔が見える。

この一節はこれに似ています。


killing と aim に視点を置くと,それから連想するのはズバリ殺人です。 ひょっとしたら「俺」は狙いを定めて彼女を殺(あや)めようと思っているのか。
するとこれとよく似たシチュエーションの歌があることに気づきます。
ポール・サイモンの時の流れにです。 こちらも久しぶりに出会った女性への想いを募らせ,夜明けのニューヨークのアパートで危ない幻想をいだいている男が主人公。


さてこの詞の視点を this world と true に置くとちょっと違ってきます。
この世間のせいで君はつらい思いをしているんだね と優しく思いやる言葉になります。
kill には「精神的に疲れさせる」の意味があるからです。
そして true から「真(まこと)」という高貴な概念が現れます。
そうなると 「君は疲れてると言っている自分の目論みには嘘はない」という風にとれます。 それで浮かび上がるイメージは誠実に真剣に自分の思いを伝えようとする健気な男の姿。


           


そもそもアルバムのタイトルにもなっている My aim is true. とは何でしょう。
この言葉, 回数にして11回, 時間にして1分5秒, フェイドアウトするまでコステロは繰り返します。
コステロにとって思い入れのある言葉なのでしょう。
そう安易に訳せない。 それで3日3晩悩みました。 


最後の節にある big light もコステロは別の歌で歌っています。
その詞では big light は大きな火の玉で,日常的な風景である窓の外から部屋の中に入って来る, そういう超自然現象的なイメージのものであるように思えます。
この詞では彼女の姿を浮かびあがらせる, マリア像とかキリスト像とか仏像の後光みたいな光。 「俺」が彼女を偶像化している象徴的な言葉と見たらよいと思うのです。


それで, この big light の出てくる連は主人公の頭の中で彼女の声がし, 姿が見えるという解釈しました。
彼女を忘れたいのに頭の中にこびりついているのです。
だから消したい。 そして前述のサビの一節になります。
こうすると killing が妙に浮き出てしまう。
でもコステロの My aim is true の歌い方は優しく誠実です。


この不可解さ。 


騙し絵のように解釈によっていろいろ取れる詞です。 
だから私の訳は一つの解釈として捉えていただければと思います。


なおウエディング・ケーキに指を入れるという個所がありますが, 昔イギリスではウェディング・ケーキの中に結婚指輪を入れて焼くという風習があったことを参考までに記しておきます。 
この詞の場合は, 例えば,結婚式で浮かれて,ケーキを指で取って相手に顔に塗るみたいなそんな幸せそうなカップルの姿を連想すればいいのだと思いますが。