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121   Stairway To Heaven   (Led Zeppelin)
 天国への階段  (レッド・ツェッペリン)
1971
  前のページへ  原詞・訳詞  
さて詞についてです。


『天国への階段』はその内容が謎めいていることでも有名です。
以下は歌詞の参考になるかと思うヒントと私の個人的な解釈(訳詞の弁明)です。


前述の Hammer of the Gods によると作詞担当のロバート・プラントは当時読んでいた本がこの歌詞に影響していることを明かし, その中でスコットランドの古物研究家ルイス・スペンス(Lewis Spence 1874-1955) のMagic Arts in Celtic Britain (直訳:ケルト的イギリスにおける魔術)の名を挙げています。 
ここをクリックすると Amazon Com に行きます。 そのページの「本」の写真をクリックすると目次などを見ることができます。 Magic Arts in Celtic Britain の翻訳は検索する限り見当たりませんが, 他についての記述はここをクリックすると複数のサイトで読むことができます。


本来ならこの本を読んでおくべきでしょうが, 正直時間がありません。  ツェッペリン研究家の方は必読でしょうが, 受験シーズンの学習塾経営者にはこれは免除してもらって先に進ませてもらいます。


            


まずタイトル Stairway to Heaven です。
この『天国への階段』という考えはキリスト教文化の人間には旧約聖書の創世記28:12に記された Jacob's ladder (ヤコブの階段またはヤコブの梯子)を連想するでしょう。 これはハランに向かうヤコブが途中, 石を枕に寝たときに見た夢に出て来たのが天へ通じる梯子(階段)で, 後のキリスト教の教えでは俗界の人間を天に導くキリストの化身とみなされているようです。
なお Hammer of the God によると1946年に William Powell という人が主演した映画のタイトルと同じだそうです。


詞ではありませんがこの歌はイントロも大切です。 美しい笛の音がしますが, これはいわば伏線です。 
歌詞の中にたびたび登場する piper (笛吹き) の tune (調べ)だと解釈します。


では本編へ。


There's a lady who's sure all that glitters is gold
And she's buying a stairway to heaven.
光るものはすべて黄金だと信じている女がいる
彼女は天国への階段を買おうとしている


all that glitters is gold は高校生の英語の授業で教わる部分否定の例文で有名なことわざ All that glitters is not gold.  または All is not gold that glitters. 「光るものがすべて金とは限らない」を文字っています。 


ヒカリ物が好きなこの女性, 金で天国へ行こうという魂胆のようですが, ロバート・プラントはこの女性の世俗的な行為を批判しているように思えます。
これはこの歌が12月に作られたこそ生まれた主題ではないでしょうか。 守銭奴スクルージが主人公のディケンズの『クリスマス・キャロル』を思い出させますね。 キリスト教文化圏の人間にとって12月は心が一番清くなる月なのでしょう。



There's a sign on the wall but she wants to be sure
'Cause you know sometimes words have two meanings.
壁に掲示がある 「よく確かめなくちゃいけないわ」(直訳:しかし彼女は確かめたがる)
時に言葉には裏に隠された意味があるものだから



女が天国への階段を買おうと店に来たら壁に掲示があったというくだり。 
「壁に掲示がある」というこの部分をサイモンとガーファンクルの『サウンド・オブ・サイレンス』のネオン・サインと比較するとおもしろいでしょう。


In a tree by the brook, there's a songbird who sings,
小川の脇の1本の木にさえずる鳥が1羽いる



ここで突然風景は牧歌的になり以降歌詞の舞台は田園に移ります。
おそらくここ以下の部分は壁の掲示に書かれている「裏に隠されている意味がある」言葉なのでしょう。 謎めいたフレーズがたくさん登場します。


There's a feeling I get when I look to the west,
And my spirit is crying for leaving.
西を向くと私にはある感情が生まれ
私の魂は抜け出たがって声をあげる



この部分は最も宗教的なフレーズの1つです。
「西を向く」とありますがキリスト誕生のときの東方の三博士とか教会の入り口は東を向いて建てられるといった事実を考えるとキリスト教的には「東を向く」のが正統でしょう。 西を向くのは極楽浄土は西方にあるという教えから考えて仏教的です。


もっともロバート・プラントが当時関心があったのは古代ケルト民族のドルドイ教などキリスト教以前の宗教で, この歌詞全体にキリスト教から見れば異教徒的な雰囲気が漂っていますから, それを考えると「西を向く」というのもわからなくはありません。
もし「東を向く」としたらあまりにもキリスト教的でヘビメタの持つ異端性が失われて幻滅したかもしれません。 その意味でも「西を向くと魂が抜け出る」という発想はヘビメタ的には正統だと思われます。


In my thoughts I have seen rings of smoke through the trees,
And the voices of those who standing looking.
頭に浮かぶのは木々の間から出る煙の輪
そして立って見ている者たちの声



この部分は前述の本 Magic Arts in Celtic Britain の表紙になんとなく感じが似ています。 ロバート・プラントはこの本の表紙のような絵からインスピレーションを得たのではないでしょうか。



And it's whispered that soon if we all call the tune
Then the piper will lead us to reason.
こんな囁きがする もしあの曲を吹くように頼めば
笛吹きは私たちが道筋を立てて考えるように仕向ける



この部分はの piper (笛吹き)の tune (曲)がイントロの笛の音でしょう。
そしてこの piper と call the tune の組み合わせは英語のことわざ
He who pays the piper may call the tune 「笛吹きに金を払ったものが曲をリクエストできる」
もしくは
If you call the tune, you must pay the piper. 「笛吹きにリクエストするなら金を払わなくてはいけない
を連想させます。

「費用を受け持つものが決定権を持つ」という意味です。 
アメリカ政府がイラク復興事業の受注先をアメリカと, 日本を含む今回の戦争を支持した国に限定すると決定した(2003年12月11日報道)という行為はまさにこのことわざが示している状況です。


しかしこの歌の場合, 文字通りに笛吹きに曲をリクエストすると「道筋立てて考えろ」と言ってくると見た方がいいように思います。 
それでは何を考えるのかというと, それは後になるとわかるでしょう。


And a new day will dawn for those who stand long
And the forests will echo with laughter.
そして長く立ちんぼうしていた者たちに新しい朝が来る
そして森に笑い声が木霊する



If there's a bustle in your hedgerow, don't be alarmed now,
It's just a spring clean for the May queen.
もし君の家の生垣がガサガサ音がしても驚いてはいけない
それは五月祭の女王を迎えるための春の大掃除なのだから



この中で hedgerow はイギリス英語で道路や畑沿いの潅木による垣根のことのようです。 写真はここをクリック。  ヘッドリーの写真にもよく似た風景があるので, ロバートが散歩とか狩猟をした時に鳥か何かが垣根でガサガサ音を立てたのを聞いていて, それがインスピレーションになっていると考えるのはどうでしょうか。


spring clean は日本で言えば年末の大掃除のようなもので, 5月1日のメイデイ(現在は労働者の祭典ですが元は春の訪れを喜ぶ農業系の祭り)前の大掃除を意味します。 メイデイに選ばれるいわばミス・メイデイのようなものが May Queen です。 写真はここをクリック
唐突に出てくる May Queen は韻を踏んでいるわけでもないのでそれなりに意味があるのだと思いますがそれが何であるかはわかりません。 たとえば耳にした話題だったかもしれないし, 当時ロバートが読んでいた本の中に出てきたかもしれない。 
聞き手が?を持つような言葉を歌詞に入れるというのは当時の流行だと思えばいいのかなと思いますが。



And as we wind on down the road
Our shadows taller than our soul.

道をくねくね進むにつれて
ボクたちの影は魂より高くなる



間奏部のあとロバートの唱法が一転し, 地獄からの叫びような典型的なヘビメタのそれになります。 ここからあとの歌詞の舞台はロバートが当時傾倒していた古代遺跡的な荒涼とした木々のない岩と土だけ土地を思い浮かばせます。


影と魂については検索をしていて面白いサイトを見つけました。 イギリスの古典文献学者サー・ジェームズ・ジョージ・フレイザ (Sir James George Frazer :1854-1941)の書いた The Golden Bough 『金枝篇』の原文をそのまま掲載しているサイトです。 この『金枝篇』は訳書が出ているのでご存知の方もおられるかもしれません。
ロバート・プラントがこの本を読んでいたかどうかは不明ですが読んでいてもおかしくない本のような気がします。


この中に Soul as a Shadow and reflection という項があります。
世界中の各民族の文化で影に魂が宿っているという信仰があることを実例を挙げて述べられている項です。 英語圏の場合はどうなのか, 試しに tall shadow で検索すると心霊現象に関する用例が少なからず出てきました。 曰く台所仕事をしていると背の高い影が見えたとか真夜中に声がするので目を開けたら背の高い影がベッドサイドに見えたとか。


この歌の魂と影という言葉から不気味なものを感じてもおかしくないでしょう。 (それでなくてもロバートの歌声は不気味です。) 
ただこのフレーズに関しては「道をクネクネ進むにつれて影が魂より長くなる」というのは「人は生きているうちに本来の自分の姿(魂)より虚栄の姿(影)が目立つようになる」という意味でとったら, この後に続く


There walks a lady we all know
Who shines white light and wants to show
How everything still turns to gold.

ほら向こうにみんなが知っている女が歩いている
彼女は白い光を輝かせ教えたくしょうがないのだ
どうやってすべてのものが黄金になるのかを



というフレーズの示唆するものと合うのではないでしょうか。



And if you listen very hard
The tune will come to you at last.
When all are one and one is all
To be a rock and not to roll.

もしよく耳を澄ませば
最後にはあの調べが聞こえるだろう
皆がひとつになり ひとつが皆になり
岩になるときに 転がりはしない岩になるときに



最後のフレーズで私が一番この歌詞の中で気に入っている部分です。
皆がひとつになり ひとつが皆になり についてはまた英語のことわざが下地にあるのではないかと推理します。 それは
It will be all one a hundred years hence(直訳:今から百年経ったらすべてがひとつになる。)というもので貧富賢愚美醜すべて百年後には白骨冷骨という言葉が手もとの英語諺辞典に見えます。
最後の to be a rock and not to roll は結果の不定詞ですが, この中に rock and roll が折り込まれているのはロバートの遊び心でしょう。 
 

耳をすませば聞こえる調べはイントロから聞こえてきた笛吹きの笛の音で, これはこの歌詞の主題である(と私が思う)「金があったところで天国へ行けるわけでなく死んでしまえば皆同じ。 それより心を豊かにして現世を送りなさい。」 という12月らしいメッセージなのではないでしょうか。  
途中で笛吹きが筋道をつけて考えるようにさせたことや, 耳鳴りとなっていたブンブンという音もこのメッセージであるとすると歌詞の一貫性が出ると思います。


ということで長々書きましたがどうでしたでしょうか。
ともかく最後はひとこと。
            I wish you a merry Christmas and a happy new year!
                                   (2003年12月記)

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