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英文法の質問箱
仮定法過去ではない if +過去形
質問:


はじめまして、突然のメールで失礼いたします。
当方、29歳で、まだはっきりした形で職にはついておりませんが、これから英語に関わった職に就きたいと、日々英語学習に励んでおります。
これは私個人の感想なのですが、言葉とは難しいものですね。
英語に関する疑問でも、手元の辞書や文法書などではなかなか解決しないものが学習を進めていくにあたり、たくさん出てきて消化不良、もともと英語畑ではない私の不勉強を痛感しておりましたこの折、こちらの質問箱にたどり着かせていただきました。
おひとりで英語塾を経営なさっているとのことですが、取り組んでおられる姿勢に、熱意と誠実さが伝わってくる気持ちがいたしました。(HPを拝見させていただいた感想です。)
あまりネット上でやり取りを望まない私もこの方なら是非、と思い切ってメールをさせていただいた次第です。
日々お忙しくされていることと思いますが次の私の疑問、是非お助けいただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。


(質問内容)


接続詞のifで、「仮定法」ではない、「過去形のif」といものは存在しないのでしょうか?例えば、
  「もし君がタナカさんのことについて聞いたのなら、彼を手伝ってあげるべきだよ。」 のように、「聞いたのなら」は、「時制は過去」でも、「事実と 反している」とはいえない、「事実かも知れないし、事実ではな いかも知れない」、つまり「話し手にとっての不確かな事柄なだ け」なわけです。これを「仮定法」とは言えないですよね?また、こういう場合の時制はどうなるのが正しいのでしょうか。 やはりこの場合上記の日本語例文は  If you heard about Mr.Tanaka you should help him. と、if節を普通に過去形にすればよいのでしょうか?でもそうす ればこの文は「仮定法過去」とも受け止められ、その場合は「タ ナカさんのことについては実際は聞いていないのだけれども、もしきい ているなら」になってしまいませんか? If you've heard about…と、完了形を用いるとどうか、とも思っ たのですが、同じような疑問が浮上してきます。 「相手の過去の行動が話し手にとって不確かなだけのときのifの文」 … これの文法上での扱いについて詳しく解説頂ければと思っており ます。宜しくお願い致します。            


質問者: は□
学年・年齢: 29歳
性別: 女性
回答:

ご丁寧なメールありがとうございました。


> 当方、29歳で、まだはっきりした形で職にはついておりませんが、これから英語に関わった職に就きたいと、日々英語学習に励んでおります。


頭の下がる言葉です。 古い言葉なら「刻苦勉励」ですね。 語学はゴールのないマラソンみたいなところがありますが, 楽しい面もあります。
たぶん学ぶのが楽しいと思う方だと思います。 ぜひ精進されて希望する仕事に就けますようお祈り申し上げます。


さてご質問にお答えしましょう。


実は if節の中が過去形の場合は
(1)仮定法過去を表す。 
(2)単なる過去の条件を表す。(ご質問でいう「if の過去」)
の2つのケースがあるのです。 


だから If you heard about Mr.Tanaka,は
(1)として「(あなたは田中さんについて聞いていないけれど)もし聞けば」
(2)として「(あなたが田中さんについて聞いたか聞かないかわからないが)もし聞いたなら」
の2つの意味にとることができます。


その文が(1)なのか(2)なのかの判断は, if節でない部分,つまり帰結節(主節・主文)で見ることになります。
具体的には帰結節に助動詞の過去形が使われていれば(1)仮定法, そうでなければ(2)単なる条件と判断することになります。
例:
(1) If you were sick, you couldn't go camping.  もし病気ならキャンプに行けないのに。(病気じゃないから行ける)
(2)  If you were sick, why did you go camping?  もし病気だったしたらなぜキャンプに行ったの?


■ さて今回の場合は, もうひとつ説明しなくてはならないことがあります。 
should についてです。
たまたま例文としてあげた you should help him. の場合, should は shall の過去形を使っています。
だから (1) の仮定法にあたるとお考えになったのだと思います。


しかしこれは(2)として「彼を手伝ってあげるべきだよ。」 の意味にとられる可能性が高いでしょう。 
というのは should を shall の過去形と捉えるのはアメリカの現代用法では非標準的であり, イギリスでも会話では稀な用法になりつつあるからです。 


もちろん英語は米英以外でも使われていますから, この should を shall の過去形と捉えて仮定法過去だと見ることもあるかもしれません。
そこで「もし君がタナカさんのことについて聞いたのなら、彼を手伝ってあげるべきだよ。」 を混乱を避けて訳したければ


If you heard about Mr.Tanaka, you ought to help him. とか
If you heard about Mr.Tanaka, why don't you help him? としたらよいでしょう。


なお上の説明では(1)仮定法過去(2)単なる過去の条件と書きましたが, (1)のような事実に反することを「もしも〜なら」というのは却下条件と言い, (2)の事実かどうかわからない単なる条件として「もしも〜なら」というのを開放条件と言います。 



上の回答に対する質問者からのレスポンス:
早速のご解答、それもこれ以上ない程丁寧で詳しく、分かりやすいご解答、恐縮です!また、感無量です!そして、「メカラウロコ」でした!!


このような方とめぐりあわせが頂けたということに、今、心より喜びが湧き上がっております。言葉では言い表せない程です。
塾長様も「英語の勉強はゴールのないマラソンのようなもの」とおっしゃっていましたが、そのどこまでも続く道のりを、また、「がんばろう!」という気持ちも新たにさせて頂いた思いです。
塾長様のような方に習っておられる方々は本当に幸せですね。
HPからのみですが、そこから伝わってくる誠実なお人柄や取り組んでおられる様子を受け止め、この方ならと、思い切ってメールをさせて頂いて本当に良かったです。


ところで、何かとお忙しいことと存じますが、当方、実は質問させて頂きたいことがまだありまして、またお願いしなければならないことがあるかと思います。しかしながら頂きましたご回答メール、あれ程ご丁寧なものを頂くには先生の貴重なお時間を多大に割いて頂いてのことと察します。今一度、不明な点は自ら可能な範囲で調べ直し(と申し上げましても何分、英語畑ではない私だけに専門的な学術書などはとても手におえたものではありませんが)、解決に努めた上でやはり解明が困難であるとなりました折にまたお世話になることがあろうかと存じます。よろしいでしょうか?


これからますます寒くなってまいります時節です。お体にお気をつけになって、今後の先生のますますのご活躍をお祈り申し上げます。